そして、今日最後のドアへと向かった。
でもそこは、
ただの「最後のドア」ではなかった。
一度さよならをして、
もう一度帰ってきたドア。
扉が開くと、
ガウン姿のあなたが満面の笑みで
迎えてくださった。
「ただいま」
「お帰り」
たったそれだけの言葉なのに、
胸の奥がふわりとほどけた。
まるで我が家へ帰ってきたみたいだった。
待ちくたびれたような顔ひとつせず、
優しく、温かく、
大きな心で包み込むように
迎えてくださったことが何より嬉しかった。
私が来る前に買ってきた
ビールとおつまみを並べ、もう一度乾杯。
「でも、あんまりゆっくり
飲んでちゃいけないわね」
そんなことを言いながら笑い合う時間さえ、
もう二人にはとても自然だった。
今度は私があなたに触れる。
優しく、温かく、心を込めて。
私を魅つめながら
「気持ちいい」と言ってくださるあなた。
そして「かわいい、かわいい」と
頭を撫でてくださった。
かわいいと言われると、
やっぱり胸がキュンとする。
いくつになっても、
そんな一言は心の奥に
小さな灯りをともしてくれる。
あなたのたくましい腕に包まれながら思った。
私たちは、
いつからこんなに自然になったのだろう。
初めて逢った日のことは、
今でもはっきり覚えている。
そして二度目からは、
いつもあなたがビールとおつまみを
用意してくださるようになった。
乾杯して、話して、笑って。
そんな何気ない時間をひとつ、
またひとつと重ねてきた。
だから今はもう、
何か特別なことをしなくてもいい。
二人だけの時の流れ。
二人だけの空間。
二人だけの空気。
それを感じていられることが、
私には何より嬉しい。
雨降る移ろいの夜。
あなたの心に私の心がそっと触れ、
流れてゆく時の気配まで愛おしく感じていた。
ありがとう、あなた。
別れ際、やっぱり少し名残惜しかった。
「今日はありがとう。また待ってるね」
そう言って外へ出ると、風さんが待っていた。
——お疲れさま。今日も長い一日だったね。
そんなふうに
私を労ってくれているようだった。
ねえ、風さん。
今日はなんだか不思議な一日だったの。
続けて二度呼んでもらったり、
キャンセルになるかと思えば、
少し遅れてドアが開いたり。
一度さよならした場所へ、
また帰ってきたり。
行ったり、戻ったり。
待ったり、逢えたり。
予定通りには進まなかったのに、
心だけは不思議なくらい、
逢うべき場所へ運ばれていった一日だった。
——そうだね。
風さんが笑ったような気がした。
うふふ。
雨の夜
帰ればひらく
君のドア
ただいまひとつ
心ほどける
— Morimura
雨夜、ふたたび帰る✨
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