気づけば、
心のサンクチュアリに立っていた。

いつここまで来たのだろう。

海で汽笛を聞いたあたりから、
私の心は遠いところへ旅をしていたらしい。

強い風が吹いた。

帽子が飛ばされそうになり、
慌てて手で押さえる。
「もう戻っておいで」
風さんに冷たい水を
バシャッとかけられたように、
突然、今へ引き戻された。

ポールのロープが風に揺らされ、
カン、カン、カン――。
夢の旅の終わりを告げる
鐘のように響いていた。

今朝の私は、
二人の私の間をずっとうろうろしている。

自分の足で前を向いて歩く私。

そして、誰かの手を取って、
少しだけ心を委ねる私。

私は、この「移ろう時間」が
好きなのだと思う。

あちらへ行っては何かを思い出し、
こちらへ戻っては忘れていたものを拾う。
一つずつ掬い上げながら、
心を軽くしていく。

ひとりで歩けるから、
手を引かれることが嬉しい。

自分で立てるから、委ねることが嬉しい。

どちらかが本当の私なのではない。
どちらも私。

やがて鳥の声が聞こえてきた。
虫も鳴いている。
木々も風に揺られ、
さやさやと音を立てている。

きっと、ずっと鳴っていたのだ。

私の心が別の世界を旅していて、
聞こえていなかっただけ。

そしてコスモスが微笑んでいた。

昨日、そこに魅たのは「乙女の祈り」

今日もまた、乙女は祈る。

でも今日は、
何かを叶えてほしいと願う祈りではない。
こんなふうに心を躍らせる時間が、
また私のところへやってきたことへの祈り。

神様のポケットから差し出された
今日という一日を、
両手を広げて受け取ろう。

そして心を思いっきり解き放って――
その箱の中へ、飛び込んで行っちゃおう。

強い風が、また背中を押した。

さあ、夢の時間はここまで。

まずは今日も、自分の足で歩こう。
その先に待っている時間へ向かって。