赤と緑の表紙を開いた
遠い日の私
ページの向こうに
ひとりの女性がいた
深いブルーのワンピース
耳元には金色の光
その色を
ミッドナイトブルーと呼ぶことを知った
たったそれだけなのに
私はその青から
いつまでも離れられなかった
夜の街の灯りを映したグラス
揺れる光
静かに語り合う人たち
書かれていたものと
私が心の中で描いたものは
いつしか溶け合って
限りなく透明に近い
私だけのブルーになった
いつか私も
その色の中に立ってみたい
そう思った
ミッドナイトブルーをまとい
金色を耳元に揺らし
誰かにエスコートされながら
夜の扉を開いてみたかった
やがて私は
本当にその青を見つけた
身体を包む深い色
胸元から流れるドレープ
鏡の前に立った私は
物語の続きを
自分で歩き始めたつもりだった
ワインを飲んだ
笑った
語った
夢は確かに叶った
けれど
私が心の中で書いていた続きには
まだ先があった
夜景の見える窓辺
隣に立つ誰か
魅つめ合い
抱きしめられ
口づけを交わし
最後には
ふわりと抱き上げられる私
そこから先は
なぜか何も描いていなかった
きっと私は
その先が欲しかったのではない
ただ
誰かにすべてを委ねてもいい私を
魅てみたかったのだ
長い時が流れたあのワンピースは
今も眠っている
もう
それを着て出かけたいとは
あまり思わない
肌を魅せるより
美しく包みたいと思うようになった
服の光を借りて
私を魅せるより
私の内側からこぼれる光で
服まで輝かせたいと思うようになった
それなのに今朝
海から来た風が
記憶を柔らかなブラシで撫でたとき
ぽん
青が飛び出した
忘れていたはずの
ミッドナイトブルー
あの頃の私まで
一緒についてきた
かわいいね
私は
遠い日の私に言った
あなたが憧れていたもの
まだここにあったよ
でもね
もう
あのワンピースを着なくてもいいみたい
ひとりで歩ける私がいる
だからこそ
差し出された手を取ることが嬉しい
自分で未来の地図を描ける私がいる
だからこそ
ときにはその地図を畳んで
誰かに心を委ねることが嬉しい
今朝
曇り空にはハートが浮かび
海は踊り
汽笛は前奏曲を奏でていた
まだ来ぬ時間に
心が震える
心が未来に恋をしている
遠い日に蒔かれた青は
消えてなどいなかった
長い眠りの中で
私になる日を待っていた
そして今
ミッドナイトブルーの記憶に
ピンクゴールドの朝の光が差す
青はもう
追憶ではない
私の中で
もう一度
芽吹いている。
青、芽吹く✨
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