四神を胸に、山下公園へ出た。

風が強い。

風さん、私ね、四神の旅をしてきたの。
そして、なんだか少し変わったみたい。

その言葉に応えるように、
風が大きく吹き抜けた。

ザブーン。
ザブーン。

風に煽られた海が大きくうねり、
波が音を立てる。
一つの波が押し寄せる。
そしてまた次の波。

朱雀を魅たときの高鳴り。
白虎の白に息を呑んだ瞬間。
玄武の力強さ。
そして、
もう一度戻った朝陽門で魅た青龍の深い青。

あの青に、
昨夜あなたと過ごした群青の世界が重なった。

一つひとつの感動が、
波になって私の心へ押し寄せてくる。

そうか。
感動とは、
心に波を起こすことなのかもしれない。

また風が吹いた。
大きな風に身体を煽られ、
少しだけバランスを崩した。
それでも、なんだか気持ちがいい。

いつもの道をたどり、
心のサンクチュアリーへ向かった。

そして顔を上げる。
空が、目の前いっぱいに広がっていた。

今朝、カーテンを開けたときに見えたのは、
建物と建物の間に切り取られた
小さな空だった。

そこに炎のような妙法を魅て、
やがて翼を広げる朱雀を魅た。

でも今、私の前にある空には果てがない。
薄いグレーに覆われていた
雲を押しのけるように、
透き通った空色が広がっている。
そして、その空を細長い雲が駆け抜けていた。

右から左へ。
一つ。
また一つ。

大きな雲のあとを、
小さな雲が追いかけていく。

龍だ。

大きな龍が先頭に立ち、
何頭もの小さな龍を率いて、
空を駆け抜けている。
その龍たちの間を、朝の光が走っていた。

今朝、朱雀を追いかけて外へ出た。
気づけば四神を巡り、
いつもの門を違う目で魅て、
そして今、
心のサンクチュアリーで
龍たちが駆ける空を魅ている。

不思議だな。
心の旅は、どこまでも広がっていく。

街の小さな門から神話の世界へ。

一片の雲から、果てしない空へ。

どんなに大きな世界だって、
心なら一瞬で飛んでいける。

そして、その果てしない世界を――
私は、心につかむことができる。

そう思った瞬間、胸がまた大きく鳴った。

ドキドキ。
ドキドキ。

今朝の始まりには、朱雀がいた。
そして心のサンクチュアリーには、
空を駆ける龍がいた。

世界が変わったのではない。
私の心が広がった分だけ、
魅える世界もまた、
果てしなく広がっていた。