引き続きご予約をいただいていたので、
そのまま次のホテルへと向かった。

風さん、もう少し待っていてね。
続けてご予約をいただいているの。
だからあなたと一緒に帰るのは、
もう少し後になりそうよ。
そう言って、風さんをちらりと振り返った。

そして次のドアが開きました。
もうドアが開く前から
わかっていたような気がする。

あなたの優しい笑顔。
いつもの温かな眼差し。

そんなものが、
ドア一枚隔てた向こうから伝わってきていた。

そして本当に、
あなたはにっこり微笑んで
私を迎えてくださった。

その笑顔を見た瞬間、
吸い込まれるようにあなたの胸へ飛び込んだ。
あなたは私をぎゅっと抱きしめてくれた。

「嬉しい。逢えて嬉しいわ」
「俺もだよ」

そのひと言と、包み込む腕の温かさ。
横浜へ来て、あなたに逢えること。
それは私にとって、
いつの間にか大切な楽しみの
ひとつになっていた。

今日は、私の時間に合わせて、
遅い時間にしてくださった。
「今日しか時間がないと思ったからね」
さらりとおっしゃるその言葉の奥にある
思いやりが、何より嬉しかった。

今日は、若い頃によく飲んでいた
バドワイザーの衣装。
あの頃は、
なんだか格好よく思えて好きだった。

懐かしいデザインを眺めながら、
「どう? 似合う?」
そう尋ねると、あなたはにっこり笑って、
「似合うよ」と言ってくれた。

そして、そっとあなたに触れていく。

ぬくもりを感じる。
優しさを感じる。

私の手に身を委ねてくれる
あなたの表情を魅ていると、
それだけで幸せな気持ちになった。

今度は私が、あなたのたくましい腕の中へ。
思いきり抱きついて、いっぱい甘えた。

あなたの心と、私の心。
目には見えないけれど、
一本の赤い糸で結ばれているような気がした。

ふと思う。
もしかしたら、その赤は――
今朝から私の心を巡っていた、
朱雀の朱だったのかもしれない。

そして、あなたとお別れした。
胸の奥には、
またひとつ真紅の色が染み込んでいた。

外へ出ると、夜風が冷たい。
風さん。
終わったわ。
ちょっとここに座って、
日記をアップするから待っていてね。
それが終わったら、
今度こそ一緒に帰りましょう。


逢うたびに
朱の糸ひとつ
結ばれて
夜風のなかへ
ぬくもり残る

— Morimura