長い一日が終わろうとしている。

今朝の私は、
ずいぶん遠くまで心を旅させた。

朱雀、青龍、白虎、玄武。
四神の世界を巡り巡って、
空を見上げていたはずの私は、
いつの間にか自分の心の奥を魅ていた。

なかでも心に残ったのは、朱雀の「朱」
燃えるようでいて、
どこかあたたかいその色が、
今日という一日の
始まりを告げているようだった。

そして四神の世界から戻った
私を待っていたのは、若様の笑顔。
こんな朝に若様の笑顔をみるなんて、
今日は鬼の若様の花嫁になった気分。

眠りたい。
でも若様の手も取りたい。
結局どちらも手放さなかった。
欲張りでいい。
心が動くなら、
その心についていけばいい。

午後、外へ出ると風さんが待っていた。
風さん、お待たせ。
大通り公園を一緒に歩きながら
朝からの話をした。

空の世界を旅していた私は、
いつの間にか地上へ戻り、
頬に風を感じ、
これから逢う人へと心を向けていた。

そして開いたドアの向こうに、
お日様のような笑顔があった。
外は曇っているのに、
私の心には光が差した。

朝、空に探していたものを、
私は目の前の人の中に
見つけていたのかもしれない。

やがて夜。

ひとつのドアを出て、
また次のドアへ向かう。
風さん、もう少し待ってね。
あなたと一緒に帰るのは、
もう少し後になりそうよ。

そう言って風さんと別れ、
私はもうひとつの時間へ向かった。

逢うために時間をつくってくれる人がいる。
また逢えたことを喜び、
笑い合える人がいる。
言葉より確かなぬくもりがある。

そのとき、朝から心に残って
いた「朱」が、
ようやく別の姿を見せた。

朱雀の朱は、
ときめきの朱となり、
人のぬくもりを巡り、
いつしか人と人を結ぶ朱の糸になっていた。

そうか。
今日の私は、
一日かけて「朱」を歩いていたのだ。

今日という物語も、
いよいよ最終章に入ろうとしている。

すべてのドアを閉じて外へ出れば、
そこには風さんがいる。
お待たせ。
今度こそ一緒に帰ろう。

空から始まった今日の物語は、
人のぬくもりを巡り、
最後には私自身の心へ帰ってきた。

誰かを想えたこと。
誰かが私を想ってくれたこと。
そして、
そのひとつひとつに
心を動かした私がいたこと。

それが今日、私が結んだ朱の糸。

さあ、風さん。
今日の朱を胸に灯したまま、
明日の朝へ帰ろう。


朝翔けし
朱は人を結び
夜となり
風と帰れば
胸に糸あり

— Morimura