最初の白は
何も知らない白だった

ふわふわと
ただ柔らかく
まだ何色にも染まっていない

純真無垢という名の白

そこへ
ひとつずつ
色が重なっていった

誰かを想う色
心を焦がす色
静かに寄り添う色
涙を知った色
立ち上がった日の色

いくつもの海を泳ぎ
いくつもの海を脱ぎ

私は
私の色を増やしてきた

深紅の思いもちゃんと知っている。
群青の美しさも知っている。
緑の安らぎも知っている。
黒の静けさも知っている。

それでも私は
また白へ還る

白へ還るというのは
何もなかった自分に戻ることじゃない

忘れることでも
捨てることでも
なかったことにすることでもない

大切なものは
大切なまま

胸の奥で
小さな光にしておけばいい

深紅も
群青も
緑も
黒も

生きてきた私だからこそ
還ることのできる白がある

何度白へ還っても
以前と同じ白ではない

経験した色は消えるのではなく
白の奥に
光として残っている

だから壊れそうになったら
白へ還ればいい

倒れそうになったら
白へ還ればいい

心がどちらへ行けばいいのか
わからなくなったときも

いったん
白へ還ればいい

そして
また始めよう

好きな色を
ひとつずつ

心が望むままに
重ねていこう

鮮やかな色を望むなら
思いきり鮮やかに

静かな色が恋しいなら
そっと淡く

どんな色に染まっても
私はまた白へ還ることができる

最初の白は
何も知らなかった白

今の白は
いろんな色を知ってなお
もう一度始めることのできる白

白へ還る

それは
過去へ戻ることではない

生きてきたすべての色を連れて
もう一度
新しい私を始めること。

— Morimura