やっと、お仕事が終わった。
帰り道、ふと空を見上げた。
さっきコンタクトレンズを
外したまま見上げた、
あのぼやけた空が、
今度ははっきり見えるはずの私の頭上にも、
同じように広がっていた。
どうしてだろう。
しばらく魅つめていて、ふと思った。
きっと、ぼやけていたのは
私の目ではなかったのだ。
今夜の空は、ひとつの色では言い表せない。
朝、私が見つけた深い白。
その上へ今日という時間が流れるたび、
一色、また一色と、
いくつもの色が重なっていった。
緑が重なり、朱が重なり、青が重なる。
白銀が重なり、黒が重なり、
ピンクゴールドが重なる。
そこへ夜の帳が降り、
さらに月の光までが、
そっと一枚重ねられてゆく。
だから境目がない。
どこからが青で、どこまでが朱なのか。
どこに白が終わり、どこから黒が始まるのか。
すべてが幾重ものレイヤーとなって溶け合い、
ふわりと光を浮かび上がらせていた。
空いっぱいに、光の絨毯が広がっていた。
それはまるで、
一色では決して語ることのできない
ペルシャ絨毯。
朱も、青も、白銀も、黒も、金も。
四神も、その門も、月の光さえも、
一本一本の糸となって
幾重にも織り込まれている。
そして、その壮大な心模様の真ん中に、
両手を広げて立つ私がいた。
これはきっと、
今日一日をかけて織り上げた、
私だけの心の絨毯。
雨はもう、
降っているのかいないのかわからないほどの
小さな粒になっていた。
気持ちいいから、傘はささずに歩こう。
明日は何を着ようかな。
スカートは何色にしよう。
ブラウスは。
下着は。
そして靴は。
そんなことを考えている自分が、
なんだかもう新しい朝の支度を
始めているようで可笑しかった。
少し眠ったせいなのか、
頭はすっきりしている。
ひんやりした夜気が頬を撫で、
髪を撫で、
私をさらに目覚めへと連れていく。
夜なのに、まるで朝を迎えているみたい。
このまま歩き出してもいいかな。
ね、風さん。
そこにいるんでしょ。
このペルシャ絨毯の世界には、
あなたも一緒に舞っているのね。
風さん、じゃあまた明日ね。
風さんと別れ、お部屋へ戻った。
扉を開ける。
そこには、朝、私が目覚め、歩き出し、
白に還って今日という一日を始めた、
いつもの私の居場所がそのまま待っていた。
一日を巡って、私はまたここへ還ってきた。
でも、朝と同じ私ではない。
今日という時間が織り込んだ、
数えきれない色を胸に抱いている。
さあ、またここから新しい朝を始めよう。
今日、私が胸に抱いた、深い白とともに。
空に織る
幾重の色を
身にまとい
風と別れて
朝へ還らむ
— Morimura
番外編|空に織る、心模様✨
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