外へ出ると、
気持ちのいい風がふわっと私を包んだ。

「あ、風さん、おはよう。
なんだか一番に、
わーっとやって来てくれるの、久しぶりね

そんなことを話しながら、
ストレッチを始める前に、
いつもの私の小さな空を見上げた。 

そこには、昨日見たペルシャ絨毯のような
鮮やかな色彩の余韻が、まだ残っていた。

へえ。

なんだか昨日の続きを見ているみたい。

昨日、幾重にも重なって輝いた心模様。

一晩眠ったからといって、
消えてしまったわけではないらしい。
まだ私の心、輝いているんだ。

昨日のままに。
そこへほんの少し、
今日という新しい朝の色が加わっている。

屈伸をすると、膝がポキポキ。
足の付け根を伸ばしてもポキポキ。
思いきり身体を反らすと、
昨日、座椅子でぐにゃぐにゃになっていた
背中までポキポキ。

縮こまっていた身体を
ひとつずつ伸ばしていく。
なんだか心まで、
のびのび動き始めるようだった。

そのとき、雨がポツポツと落ちてきた。
嫌な予感がして、
いったん部屋へ戻り、
玄関に置いていた傘を手にして再び外へ出た。

ほんのわずかな時間だった。

なのに空は、もう違う顔をしていた。

夜の黒い帳をまだどこかに残しながら、
薄いグレーから朝の白へ。

ゆっくり、ゆっくり、
ほどけるように変わっていく。
海の方角には、
昨日のペルシャ絨毯のような
鮮やかな色彩の余韻が、
まだかすかに残っている。

その空を魅つめているうちに、ふと思った。

どれほど鮮やかに輝いた色も、
失われていくわけではないのかもしれない。

心の中へ取り込み、馴染ませ、
自分の一部へと変えていく。

そうして白へ還っていく途中、
最後に通る色が、
この薄いグレーなのかもしれない。

昨日の色を消して、白紙に戻るのではない。

赤も、青も、
幾重にも重なったすべての色を抱いたまま、
今日の私の白へと還っていく。

だから、昨日までと同じ白ではない。

またひとつ、
新しい色を知った白。

そう思ったら、
薄いグレーの空まで愛おしく見えた。

夜から朝へ。
鮮やかな色彩から白へ。
その境目を歩いている。

空に描かれた心模様とともに、
私の新しい朝が始まった。