ふと気づけば、13時10分になっていた。

あらあら。

柿ピー捜索隊となって、
無事に6袋を救出したところまではよかった。

ひとつ味見をしたら、
ごろんと横になって、
昨日の分まで睡眠貯金をするつもりだった。

だって、柿ピーを捜索するのにも
疲れちゃったもの。

ところが、捜索完了の日記をアップしたあと、
目に入ってしまった。

コミックシーモアのアイコン。

……また、鬼の若様の扉を開けてしまった。

もう頭はぼんやり。
まぶたも今にも落ちそうなのに、
若様の魅力に取り憑かれたように、
次から次へとページをめくってしまう。
どうやら私は、
しばらくこの青い炎の世界から
抜け出せそうにない。

私の好きな青い炎。

それは、群青色の世界。
頭の中では、
いつか聴いた「群青」のピアノが鳴っている。

群青の世界が、
くるくる、くるくると私の中を巡っている。
そこへ若様。

「お前だけを愛そう。俺の花嫁」

キャー。

こんなキザな台詞を、しれっと言えてしまう。
それこそが漫画の世界。
鬼の若様なのよね。

お店に出勤したのは12時半頃。
日記をアップしたのが12時40分頃。
つまり私は、
睡眠貯金に充てるはずだった時間を、
まるごと若様に差し出してしまったらしい。

今日は予定も真っ白。
白い布をふわりとかぶった花嫁さんみたい。

手元にはおにぎりもある。
だから今日は、
何かを求めて急いで外へ出なくてもいい。 

寝て。
目が覚めたら若様の青い世界の扉を開けて。
少し食べて。
また眠る。
そんな一日でもいいのかもしれない。

私はこういう、
何もしないでだらだら過ごす時間を、
自分になかなか許してあげられない。

でも今日は、
朝がまだ明けきらない頃から、
ずいぶん張り切った。
だから少しくらい、
時間を手放してもいいよね。

外の空気を吸いたくなって、少しだけ外へ出た。

風さん、そこにいるのね。
何してるの?
「あなたを待ってたんだけどね。
待ってても仕方なさそうだから、
ちょっとどこかへ飛んでくる」

そうね。
そうした方がいいかも。

今日は、あまり呼ばれる予感がしないの。

時間があれば、
やりたいことはいくらでもある。
だけど、頭が回らない。

やっぱり眠った方がいいみたい。

外から雨音が聞こえている。

雨音が、そばで調べを奏でている。
車が水しぶきを上げながら
通り過ぎてゆく音さえ、
今日は不思議なくらい優しい。
まるで、子守唄。

さて。

私は、何の合図で目を覚ますのだろう。

お店から届くメールの着信音?
それとも、
お腹が空いて、ふと目を覚ます?
それとも、
腰が痛くなって、勝手に目が覚めちゃう?

どうなんだろう。
まあ、いいか。
それはそのときの私に任せよう。

風さんも、好きなところへ飛んでいった。
雨も、好きなように降っている。
だから私も、
ほんの少しだけ時の流れから
手を離してみよう。

群青の炎を瞼の裏に残したまま。

次に目を開けたとき、
そこにどんな時間が待っているのか。

今はまだ、知らなくていい。


雨しらべ
群青ほどけ
瞼閉じ
時にあずける
午後のゆりかご

— Morimura