また寝るのも忘れて、
鬼の若様の扉を開いてしまった。
気づけば、1時間ほど時間が経っていた。
19時からご予約をいただいていたので、
外へ出た。
雨はかなり本降りになっている。
風も冷たい。寒い。
さっきまで若様の青い炎に包まれながら、
温かな恋心を抱いて
若様の世界に入り込んでいたのに、
外の雨と風が、
その熱を少しずつ冷ましていくようだった。
足元が濡れる。
冷たい。
寒くて、思わず肩が縮む。
さっきまでは雨の日の風景に
心を遊ばせていたけれど、
これだけ本降りになると、
雨の風情を感じているどころではない。
今日も寒いけれど、
明日はもっと冷えるみたい。
やっぱり羽織るコートを
持ってきたほうがよさそうね。
大通り公園の、クスノキのそばを通った。
先ほどまで感じていた
「もののあはれ」も、
この雨の勢いにすっかり
かき消されてしまったみたい。
もののあはれどころか、
寒い。
冷たい。
「風さん、そこにいるんでしょ」
「いるよ。だいぶ雨が本降りになってきたね」「うん。嫌だなあ。
暖房のついた温かい部屋で、
ごろごろしたいわ」
ふふ。
風さんが笑いながら、
ほんの少しだけ温かな風を
私のところへ届けてくれたような気がした。
そして次のドアが開きました。
とっても優しい笑顔で、
ウェルカムな雰囲気いっぱいに
私を迎えてくださったあなた。
その温かな雰囲気が、とても嬉しかった。
そしてあなたは、
こんなことを話してくださった。
「今日ね、
森村さんに逢うのは初めてなんです。
でも、2、3週間前に日記を見かけて、
なんだかすごく心に響いて。
それからずっと読んでいたら、
森村さんに逢ってみたくなったんです」
その言葉が、私はとても嬉しかった。
日記を読んで、
森村さんに逢ってみたいと思った。
そう言っていただけることが、
私はとても好き。
だって、
まだ一度も逢ったことのない誰かの心に、
私の綴った言葉が
先に届いていたということでしょう。
だからなのかな。
初めてお逢いしたはずなのに、
初めてのような気がしなかった。
言葉が先にあなたの心を訪ねていた分だけ、
私はすっとあなたの中へ
溶け込んでいけたような気がした。
ビールで乾杯。
そしてあなたは、私の顔を見るたびに、
「綺麗だね」
「本当に綺麗だね」と、
何度も言ってくださる。
最初は舞い上がるほど嬉しかったのに、
あまりに何度も言われるものだから、
だんだん照れてしまった。
でも――内心は、やっぱりとても嬉しかった。
あなたのそのまっすぐな眼差し。
誠実なお人柄。
そして、飾らない素直なお心。
私へ届けられる言葉も、温かさも、
どれも変化球のない直球だった。
その直球を受け取るたびに、
胸の奥がジン、ジンと高鳴っていく。
まるで、心のキャッチボール。
投げて、受け取って、また返す。
そんなやり取りがとても心地よかった。
そして時間まで長くしてくださって、
ありがとうございます。
あなたの温もりに包まれながら、
「森村さんの顔をずっと見ていたい」
そう言って、
温かな眼差しで私を魅つめてくださる。
その眼差しの中にいることが、
とても心地よかった。
なんだか、いっぱい甘えてしまいたくなる。
こういう気持ちになれる私って、
やっぱりあなたにときめいているんだな。
そう思うと、また胸が高鳴った。
まるで恋に胸をときめかせる乙女のように。
「また待ってるね」そう言った私に、
「絶対また来るよ。
次はもっともっと顔を魅ていたい」
あなたはそう言ってくださった。
うん。
私も、
なんだかまた必ず
あなたに逢えるような気がする。
そんなあなたとの素敵な夜を終え、
その余韻を胸いっぱいに抱きながら外へ出た。
すると――すごい雨。
土砂降り。
わあ、嫌だな。
また足元がびちゃびちゃになっちゃうかな。
そう思っていたところへ、
お店から電話が入った。
「前に停まっている車に乗ってください」
えっ?
驚いて前を見ると、
雨がひどいからと、迎えに来てくれていた。
その瞬間、また胸の奥がジーンとした。
今夜は、何度こうして
心を温めてもらうのだろう。
日記を読んで、
私に逢いたいと思ってくださった心。
まっすぐな眼差しで、
飾らない言葉を届けてくださった心。
そして、土砂降りの雨の中、
私が濡れないようにと迎えに来てくれた心。
形は違っていても、
その奥にあったものは、
きっと同じ。
まごころ。
まごころに触れるって、
こんなにも嬉しいものなのね。
外は冷たい雨。
風も冷たい。
さっきまで若様の
青い炎に包まれていた私の心を、
雨と風が冷ましてくれたはずなのに――
気づけば今度は、
現実の世界でもらった温もりが、
私の胸の中に小さな灯をともしていた。
だから私も、
いただいたまごころを
胸の中にしまっておくだけではなく、
また誰かへ、まごころで返していきたい。
土砂降りの雨の向こうで、
そんな小さな想いがひとつ、
私の心に温かく灯った夜だった。
雨しずく
冷たき夜に
灯をともす
もらった真心
また誰かへと
— Morimura
雨夜、まごころに灯る✨
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