――モリリン、本日の探検記録ーー

本日の森村探検隊。

隊員、モリリン。
相棒、傘3号。
そして案内役は――
気まぐれな好奇心。

朝の心の旅を終えたはずなのに、
どうやら今日のモリリンは、
そのまま地上の探検へ
突入してしまったらしい。

まず気になっていたのは、日本大通り。

以前見かけた石碑をもう一度確かめたい。

ところが。
「あれ? こっちだったっけ?」
歩いてみれば横浜スタジアム。

……早速、方向をしくじる。
でもいい。
見つからなかったものは、
明日の探検の宿題にすればいいのだから。

次へ進む。

途中で立ち寄った横浜かをり。
ショップの扉には営業時間の案内。
平日は10時から19時。
土日祝日は11時から19時。
そしてレストラン入口には「休業中」の文字。 これまで何度も前を通っていたのに、
こうして目的を持って魅つめると、
知らなかったことが次々と出てくる。

さらに歩けば、とんかつ檍。
「檍……これで、あおき?」
読めなかった漢字ひとつまで、
今日は小さな発見になる。

沖縄料理のお店からは、
昔よく食べに行った記憶。

ジンギスカンのお店からは、
貸し切り宴会で、
みんなが好き勝手に追加注文し、
3,000円くらいのはずのコースが、
気づけば一人1万円近くになっていた笑い話。

ホルモン屋さんを見れば、
服に匂いが移らないよう渡された大きな袋と、
そこへジャケットを押し込む
男性たちの姿まで蘇ってくる。

街を探検しているはずなのに、
いつの間にか自分の記憶まで探検している。

そして丸和。

十番館。
雨に濡れたレンガ色の建物を魅つめれば、
また文明開化の風が吹く。

昨日、かぼちゃの馬車で
お世話になったお馬さんの水飲み場にも、
「ありがとう」心の中でひとこと。

そこから今日の本命へ。

吉田橋。
一度は通り過ぎた。
雨もかなり強くなっていた。
「今日はもう明日の宿題にしようかな」
そう思ったのに――やっぱり気になる。

横断歩道を戻る。
傘3号には、ポツ、ポツ、ポツポツポツ。
雨粒のリズム。

そして――あった。
「史跡 吉田橋関門跡」
今朝から気になっていた、
関内の『関』って、どこにあったの?
その答えが、目の前にあった。

関門を境に、関内と関外。
いつも何気なく歩いていた伊勢佐木町が、
急に昔の人々の足音の残る
道に変わって見えた。

水たまりに落ちる雨。
広がる波紋。
そのひとつひとつに、
ここを行き交った人たちの思いまで
映っているようだった。

そして関門跡のすぐ近くでは、
「あっ、八十八!」
お客様から聞いていた鰻屋さんまで発見。

歴史の探検をしていたはずなのに、
最後にはしっかり
食いしん坊のアンテナまで反応する。
これぞモリリン。

今日わかったことがある。
探検とは、
目的地へまっすぐ辿り着くことではない。

迷う。
寄り道する。
昔を思い出す。
気になる。
戻る。
そして、自分の目で確かめる。

そうして一つの点が、
また次の点へつながっていく。

今朝、馬車道から始まった一本の線は、
とうとう吉田橋の「関」までつながった。

でも、まだ終わらない。
見つけられなかった石碑もある。
入ってみたい店もある。
食べてみたいものもある。

だから今日はこれでよし。

森村探検隊、
本日の朝の任務――ひとまず完了。

明日の宿題をひとつ残しておくくらいが、
探検にはちょうどいい。

— Morimura