雨が降る。

ポツ、ポツ。
パタ、パタ。
ぱち、ぱち、ぱち。

傘3号の上で、
雨粒たちが勝手にセッションを始めた。

「あら、今日はずいぶん賑やかね」

そう言いながら、
ガラス越しの街を魅つめてみる。

すると――

あら不思議。

いつもの横浜が、
雨粒ひとつで少し歪んで、
街灯も、ネオンも、レンガの壁も、
ぜんぶキラキラの万華鏡。

信号の赤はルビー。

街灯の金色はシャンパン。

傘の向こうの青は、
ちょっとだけ群青。

そしてガラスを伝う雨粒が、
勝手に街の輪郭を引っぱって、
伸ばして、曲げて、

「はい、本日の横浜、
少々デフォルメしております」

って感じ。

そう思ったら、
なんだか可笑しくなってきた。

指でガラスにハートをひとつ。

その横に、
ちょこんと丸を描いて、

「モリリン、ただいま雨の日アート中」

なんて心の中でつぶやく。

あっ。

ハートが雨粒に押されて、
ちょっと斜めになった。

まあいい。

今日の気分も、
まっすぐじゃなくていい。

少しくらい歪んで、
少しくらい滲んで、

その方が面白い。

傘3号も久しぶりの大活躍。

「どう? 今日はちゃんと主役級でしょ?」

そんな顔をしているように見える。

はいはい。

今日はあなたもスターです。

雨粒をまとって、
ピカピカ。

街を映して、
キラキラ。

その姿を魅つめていたら、
私の気持ちまで、
なんだかぷるんと弾んできた。

雨の日って、
嫌なものだと思っていたけれど、

こうして遊んでしまえば、
街は巨大なガラス細工。

その向こうに見える景色は、
晴れの日には絶対に見られない。

そう思ったら、

もう少しだけ、
この雨の中にいたくなった。

さあ、傘3号。

次はどのガラスで遊ぶ?

雨の日限定、モリリン心遊び。
本日も絶賛営業中。
— Morimura