本日の横浜。

空は朝から、どうにもご機嫌ななめ。

降る。
止む。
また降る。
そして、風まで少し冷たい。

「今日は一日、こんな感じかあ」
なんて空を見上げながら、
モリリンは思った。

晴れている日の光なら、
探さなくても向こうからやってくる。

朝陽。
夕陽。
雲の隙間から差す光。
海の上で跳ねる光。

でも雨の日は違う。
光は、少しだけ隠れる。

だから今日の任務は、これ。
雨の日の光を拾え。
モリリン、出動します。

まず最初に見つけたのは——

濡れた路面の光。
雨に濡れたアスファルト。
普段ならただ灰色に見えるだけなのに、
雨の日は街の灯りを全部映してくれる。

赤。
黄色。
白。
ときどき青。

車のライトも、
ホテルの入口の灯りも、
信号の色も、
みんな地面の上で、
少し長く伸びる。

あら。

空には太陽がいないのに、
地面の上にはちゃんと光がいる。

次に見つけたのは——

傘の向こうの光。
透明な傘に落ちた雨粒。
そのひとつひとつが、
小さなレンズみたいになって、
向こう側の灯りをぼんやり滲ませている。

くっきり見えないからこそ、きれい。
雨の日の光は、輪郭を少し手放している。
それがなんだか、やさしく見える。

そして——
窓に映る光。
ホテルの窓。
お店のガラス。

水滴のついた向こう側に、
人の影や灯りが重なる。

外なのか。
内なのか。
本物なのか。
映り込みなのか。
少しわからなくなる。

でも、その曖昧さがいい。

雨の日だけ、
街にはもうひとつの景色ができる。

モリリン、ちょっと嬉しくなる。
「雨って、光を消してるんじゃないんや」
むしろ逆なのかもしれない。
晴れの日には気づかない光を、
雨が拾いやすくしてくれている。 

さらに歩く。

水たまりの光。
これもなかなか侮れない。
小さな水たまりの中に、
ビルの灯りや空が逆さまに入っている。

足元に、もうひとつの街。
ほんの少し屈めば、
世界はちゃんと二つある。

上にも。
下にも。

そう思うと、なんだか少し得した気分になる。
そして今日、
いちばんモリリンが好きだったのは——

雨粒の向こうの月明かり。

もし夜、雲の切れ間から月が見えたなら。
雨上がりの空気の中で、
その光は晴れた夜より
少しだけ柔らかく見えるかもしれない。

水を含んだ空気に、月の光が溶けていく。
それはきっと、強く照らす光ではない。
でも、ちゃんとそこにある。

今日の雨のように。
今日の心のように。
ずっと明るいわけじゃない。
でも、どこかにちゃんと光は残っている。

モリリン、ここで本日の発見。
光は、晴れた日にしかないわけじゃない。
雨の日の光は、
少し遠慮がちで、
少し滲んでいて、
少しだけ探さないと見つからない。

でも見つけたとき、
晴れの日の光より、心に残ることがある。

だから今日みたいな日は、
「雨ばっかりやなあ」で終わらせるのは、
もったいない。

濡れた地面。
傘。
窓。
水たまり。
街灯。
車のライト。
ホテルの入口。

そして、もし会えたなら月。
雨の日には、雨の日だけの光がある。

よし。

本日の森村探検隊。

雨の日の光——採集成功。
どうやらモリリンのポケットには、
濡れずに持ち帰れる光もあるらしい。

雨粒に
ほどける灯り
拾ひつつ
心のポケット
月まで灯る

— Morimura