手。
たった一文字なのに、
不思議なくらい、
いろんな景色が浮かんでくる。
何かをつかむ手。
何かを作る手。
誰かを支える手。
そして、何かを守るために、
そっと添えられる手。
今朝、
灯りに照らされて
金色に見えた木の葉を魅ながら、
私は、人の手というものを考えていた。
自然は、
そのままで美しい。
山は山のまま。
川は川のまま。
木々は、
風に揺れるまま。
けれど、
そこに人の手が入ることで、
自然がさらに
生き生きと語り始めることがある。
石を置く。
枝を整える。
水の流れを導く。
灯りをともす。
けれど、
それは自然より前へ出るためではない。
自然がもともと持っている美しさを、
そっと引き出すための手。
植治の庭を思い出す。
自然に逆らわず、
自然を支配せず、
その声を聞きながら、
「ここでいいですか」とでも尋ねるように、
そっと手を添える。
そんな手なら、
自然もきっと嫌がらない。
むしろ、「ありがとう」とでも言うように、
水は光を映し、
木々は季節をまとい、
庭は静かに息づいていく。
そして思う。
人の手というのは、
何かを作るためだけのものでは
ないのかもしれない。
守るため。
受け継ぐため。
誰かの心を癒すため。
そして、まだ見えていない美しさを、
そっと表へ連れてくるため。
そんな手もある。
だから今日、
私はこの一文字を書く。
手強く握るのではなく。
無理に動かすのでもなく。
ただ、必要な場所に、
必要なだけ、そっと添える。
そんな手でありたい。
自然にも。
人にも。
そして、自分自身にも。
— Morimura
一筆入魂|「手」
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