朝から歩いた。
朝ごはんを作り、
お天気がいいから洗濯物をベランダに干した。

そのままパソコンを立ち上げ、
せっせ、せっせとテレワーク。
本当は会社へ出社しようかとも思った。

けれど、
行って帰ってくる時間が、
なんだか今日はもったいなく感じた。

だから、
洗濯物を干したその足で、
また机に向かった。

朝からずっと、
何かをしている。
そう思う。

寝る間も惜しんで、
夜は鬼の若様の扉を開き。
朝になれば、
まだ夜も明けきらないうちから外へ出て、
星を魅て、
空を魅て、
心の旅をして。

歩きながら物語を拾い、
帰ってからは朝ごはんを作り、
そして今は数字と格闘している。

「私、いつ寝たんだろう」
そんなことを思うくらい、
頭は少し重い。
それでも目の前の数字を見れば、
手は勝手に動いていく。

データを並べ、
加工し、
確認し、
また次へ。

サクサク。
サクサク。

横浜へ仕事を持って行ってもいい。
でも最近、
朝歩きがあまりにも楽しい。
森村探検隊も面白い。

歩く時間が長くなり、
拾う物語が増え、
日記をまとめる時間まで長くなる。

そのぶん、
どうやらテレワークの時間が
少しずつ押されているらしい。
しかも仕事というものは、
「また後で」
が通用しないものもある。

その日に片づけておかないと、
翌日の仕事が途端に詰まってしまう。

だから今日は、
少しでも荷物を軽くしてから旅立ちたい。

家族とゆっくり過ごすつもりだったけれど、
今日は朝から外出していて、
家には私ひとり。
それなら、と。
仕事に集中した。

そして、
ようやくひとつの山が片づいた。
「終わった」小さく息を吐き、
ベランダへ出る。

秋の風が、
すうっと頬に触れた。
気持ちいい。

目の前には、
青い空。
そして山。
空には、
細長い雲が何段にも流れていた。

一段。
二段。
三段。
四段。

白い雲が、
青い空を横切っている。

じっと魅ていると、
雲の先が少し尖っている。
鳥のくちばしのようにも魅える。

いや。

あれは、
竜かもしれない。
別の雲は、
四本足で駆けている虎のよう。
そう思った途端、
空の景色が変わった。

青龍。
朱雀。
白虎。
玄武。

いつもなら、
東西南北を守るはずの四神たち。
けれど今日の彼らは、
方角なんてすっかり忘れている。

ぐるぐる。
ぐるぐる。

広い秋の空を、
思い思いに駆け回っている。
まるで、
空の上で四神の物語が始まったみたいだった。

そう思うと、
ふと中華街を歩いた朝を思い出した。

何も知らずに通り過ぎれば、
ただの門。

けれど、
そこに込められた意味を知り、
由来を知り、
歴史の風を感じると、
門は急に、
ただの建物ではなくなる。

遠い時代から続いてきたものが、
今もそこに息づいているように感じられる。

私は、
そういう瞬間が好きなのだと思う。

今まで背景だったものが、
意味を知った途端に、
物語になる。

だから、
探検が好きなのだ。

そして今日の夕方、
私は横浜へ向かう。

明日の朝は、
久しぶりの海。

また空を見上げるのだろう。

雲を魅て。
風を感じて。
海の向こうに、
新しい物語を探すのだろう。

……と。ここまで考えて、
はっとする。
いけない。
いつまでも空を見ている場合ではない。
まだ仕事が残っている。

「早く片づけないと、
横浜まで余計なお荷物を
持って行くことになる」

お荷物。
いや。
正確には、
仕事。

そう思いながら、
もう一度空を見上げる。

風さん。

そこにいるんでしょう。

今日は、
一緒に旅立とうね。

モリリンも。
ヒカリンも。
みんな一緒に。
四人で行こう。

きっと向こうでは、
いつもの木々も、
待っていてくれる。

そう思うと、
少しだけ足取りが軽くなった。

秋の空では、
まだ四神たちが遊んでいる。

私はその下で、
もう一度パソコンへ戻った。

今日という一日を、
少しでも軽やかに終えるために。
 
秋天を
四神かけゆき
風笑う
旅立つ胸に
青き空あり

— Morimura