さて。本日の森村、
そろそろ暖簾を片付ける時間となりました。
残すところ、あと1時間。
最後のドアが、
もしかしたら開くかもしれない。

……でも。森村の勘では、
たぶん8割くらい、
もう静かなままなのではないかと思っている。

すると、
その気配を察したのか、
どこからともなくモリリン登場。
「はいはい、それでは本日の暖簾、
そろそろ片付けましょうかねえ」
慣れた手つきで、
さっさと暖簾に手を伸ばす。

そこへ――「待って、待ってー!」
ぱたぱたぱたっ。
今日、一緒に横浜までやって来た
ヒカリンが飛び込んできた。
「私もやるー!」

どうやら、
営業終了のお手伝いを
したくて仕方がないらしい。

「じゃあ、そっち持って」
モリリンが端を渡すと、
「はーい!」元気よく返事をしたヒカリン。

……ところが。
「ヒカリン、そっちじゃない」
「え?」
「それ、暖簾じゃなくてカーテン」
「あっ」
早くも第一失敗。

気を取り直して、
今度こそ暖簾の端を持ったヒカリン。
「せーの!」
モリリンと二人で、
くるくる、くるくる。

ところが今度は、
なぜだかヒカリンだけが
暖簾に巻き込まれていく。

「ちょっと待って、モリリン!
私まで収納されてる!」
「静かにして。一緒にしまっとくから」
「いやー!」

本日の横浜、
最後までなかなか賑やかである。
それでもなんとか、
二人がかりで暖簾は無事に片付いた。

モリリン、満足そうに腕を組む。
ヒカリン、ちょこんと隣に立って胸を張る。

「どうだった?
私、ちゃんと役に立ったでしょ?」
モリリン、しばし沈黙。
「……にぎやかしとしては満点」
「お手伝いは?」
「それは次回に期待」

そんな二人のやり取りを眺めながら、
森村は今日という一日を
そっと胸の中にしまっていく。

久しぶりに開いたドア。
思いがけず嬉しかった再会。
笑った時間。
抱きしめられたぬくもり。
そして、
静かに流れていった待機時間。

今日もまた、いろいろな色を持つ一日だった。

あと1時間。
もし最後のドアが開いたなら、
その時はその時。
森村、
もう一度ぱっと暖簾を出します。
でも、
もしこのまま静かな夜なら。
今日はここで、
ひと足早く。

モリリンとヒカリン、
二人並んでご挨拶。

「本日もありがとうございました!」
ぺこり。

……そしてヒカリン、
小声で。「ねえモリリン、
明日は私が暖簾しまっていい?」
「まず巻き込まれない練習からね」
横浜の夜に、
二人の小さな笑い声。

本日の森村、
そろそろ店仕舞いです。

— Morimura