長い一日が終わろうとしている。

今日を振り返ると、
胸に残っているのは出来事ではなく、
心が少しずつ満たされていった感覚だった。

朝の心には、
期待と一緒に、
ほんの少しの落ち着かなさがあった。

これから始まる時間が
どんな色になるのかわからない。
そんな小さな揺れを抱えていた。

けれど人のぬくもりに触れるたび、
その揺れは静かにほどけていった。

逢いたかった人に逢えること。
自分が誰かを想っていたように、
相手の心の中にも
自分が残っていたと知ること。
それだけで、
心の余白はこんなにも満たされるのだと思った。

久しぶりという言葉の中には、
逢えなかった時間がある。
けれど、逢えない時間は
途切れていた時間ではなかった。

ふと思い出したり、
元気かなと思ったり、
また逢えたらいいなと思ったり。
そんな気持ちが、
見えない糸になって
どこかでつながっていたのだろう。

だから今日、
再びぬくもりに触れたとき、
ただ嬉しかった。

そして不思議なことに、
本当に満たされた心は静かだった。
もっと、ではなく、
「ああ、よかった」ただそれだけ。

今日一日の物語は
最終章に入ろうとしている。

今夜、胸に残しておきたいのは、
今日あったことの数ではない。
嬉しかったこと。
懐かしかったこと。
ほっとしたこと。
そして、
人を想う気持ちは、
逢えない時間にも消えないのだと
感じられたこと。

今日の秋風は、
心の空いていた場所へ
そっとぬくもりを運んでくれた。
今夜はその灯りを抱いて、
静かに一日を閉じよう。

長歌

秋の風
胸の余白を
渡りゆき
逢えぬ月日も
消えぬ糸
再び触れし
ぬくもりに
ほどける心
満ちてゆく
言葉少なに
ただ思う
逢えてよかった
それだけを

反歌

逢えぬ日も
消えぬ想いの
糸ありて
今宵ぬくもり
胸に灯りぬ

— Morimura