「モリリン、おはよう」
「ヒカリ、おはよう」
「……遅い」
「第一声がそれ?」
「だって、もう窓の外、明るいよ」
「知ってる」
「4時半起きじゃなかった?」
「その予定でした」
「で、何時?」
「5時48分」
「はい、寝坊」
「違います」
「どう違うの?」
「睡眠延長成功」
「言い換えた!」
昨夜は、
気になっていたものがあって、
ほんの少しだけ
スマホを見ているつもりだった。
どうなるかな。
うまくいくかな。
そんなふうにドキドキしながら
待っていたら――ことん。
そのまま寝落ち。
しかも、
アラームをかける前に。
「モリリン、それ、完全に寝落ちだよ」
「うん」
「認めるんだ」
「寝落ちは認める。でも寝坊は認めない」
「めんどくさいなあ」
「朝から失礼ね」
そして朝。
ふっと目を開けたら、
窓の外が妙に明るい。
嫌な予感がしてスマホを見る。
5時48分。
「嘘でしょ」思わず声が出た。
「で、飛び起きた?」
「いや」
「え?」
「ちょっと考えた」
「何を?」
「そのぶん、よく眠れたなって」
「立ち直り早っ!」
「朝は切り替えが大事なの」
「さっきまで『嘘でしょ』って
言ってた人が?」
「過去は振り返らない主義です」
「5秒前だけどね」
でも、
ほんとうにそう思った。
4時半に起きるつもりだった朝。
予定より1時間ちょっと遅れたけれど、
そのぶん、
身体はちゃんと眠れた。
なら、
無理に遅れを取り戻さなくてもいい。
今から始めればいい。
「で、今日はどこまで歩くの?」
「決めてない」
「心のサンクチュアリーは?」
「行けるかもしれないし、
行けないかもしれない」
「ざっくりしてるねえ」
「今日はエステもあるからね」
「じゃあ途中で引き返すかも?」
「かも」「寄り道するかも?」
「かも」「迷子になるかも?」
「それはない」
「ほんとかなあ」
「ヒカリン!」
「はいはい」
キュッ、キュッ、キュッ、キュッ。
「じゃあ今日は?」
「足の向くまま」
「気の向くまま」
「水が流れるように」
「テクテク?」「テクテク」
「寝坊した時間を取り戻すように?」
「寝坊って言わない!」
朝からヒカリは、
よく喋る。
そしてモリリンは、
よく突っ込む。
予定より少し遅れた朝だけど、
なんだかもう、
十分に面白く始まっている。
「モリリン、そろそろのれん出す?」
「はい」
「ちゃんと起きてる?」
「起きてます」
「目、半分じゃない?」
「ヒカリ!」
「じゃあ笑って」
「もう!」
そんなこんなで。少し遅れて、
本日の森村、
のれんを出します。
さて。今日はどんな光を拾うのやら。
モリリン、
ただいま出発です。
— Morimura
「森村営業開始|睡眠延長成功、ただいま出発✨
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