「ヒカリン、森村さん帰ってきたよ!」
「時刻は8時10分ちょっと前!」
ウォーキング終了。

ところが森村さん、
部屋に入った瞬間から止まりません。

「まず何する?」
「冷凍ご飯、チン!」
「目的は?」
「おにぎり!」
「次!」
「洗濯機に洗剤セット!」
「次!」
「お風呂のお湯をためます!」

そして、その待ち時間に――
「日記、第一章!」
「え、もう?」
「もう!」
森村さんの頭の中、
くるくる、くるくる。
次。
次。
その次。

「ヒカリン、これ何かに似てない?」
「WBSじゃない?」
「やっぱり?」
森村さん、
作業が一つずつ終わるより、
いくつも同時に動いている方が、
なぜか調子がいいらしい。

ご飯、加熱中。
お風呂、給湯中。
文章、進行中。
洗濯、待機中。

「全部、頭の中で線につながってそう」
「しかも本人、楽しそう」
そしてお風呂が沸いた。

「さあ、ここでやっと休憩ですね」
「熱いお風呂でゆっくり――」
……と思ったら。

森村さん、
服を脱ぎながら、
すぐ洗濯できるようネットへぽいぽい。
そしてなぜか、
スマホを持って浴室へ。

「待って」
「まさか」
湯船にちゃぽん。
そして――第二章、アップ。

「お風呂でもやるんだ!」
「だって今日は忙しいらしいよ」
「それ、休憩っていう?」
「森村さんにとっては、たぶん休憩」

お風呂を出ると、
キンキンに冷えた部屋へ。
汗が引くのを待ちながら、
第三章、アップ。

「早っ!」
「今日、朝の三部作、全部走ってるね」

その頃、
浴槽のお湯はすっかり抜けていた。
お風呂を洗う。
洗濯機を回す。
「普通コース、スタート!」
……ところが。
森村さん、時計を見る。
止まる。

「ヒカリン」
「うん」
「間に合わない顔してる」
「してる」洗濯機へダッシュ。
普通コースから時短コースへ変更。
「判断、早い!」
「WBS、修正版入りました!」

そして次。おにぎり作り。
今日は三つではなく二つ。
夕方のお客様とは、
おそらくホテルで飲んで、
つまんで、
喋って。
宴会モードになりそう。
だから朝と昼の分だけ。

ひとつは、
森村さんの好きなモチュッパ。
もうひとつは、
ヒカリン好みの白ご飯。

「やった!」
「ヒカリンのおにぎりだよ」
そして具は明太子。
一口大に切って冷凍してきたものを
――ひとつ。
ふたつ。
みっつ。
「え、三個も入れるの?」
「入れます」

握る。
ぎゅっ。
すると、ぷちっ。
ご飯の隙間から、
明太子が飛び出した。

「出た!」
「欲張ったからだよ!」
でも森村さん、
ここで妙な発見。

「具をたくさん入れると、
おにぎりって大きくなるのね」
「……そりゃそうでしょ」
「今気づいたみたい」

そして髪を乾かしながら朝ごはん。
ゆで卵。
野菜ジュース。
そして今日は、
家族が持たせてくれた
小さなシーチキン缶までついている。

「なんだか豪華」
「朝ごはん、ちゃんと食べてるね」
そのままスキンケア。
着替え。
さあ、
朝のお oasis時間も終盤。

ところが。
「モリリン」
「うん」
「森村さんの服……」
「見えてる」

横浜駅へ向かう森村さん。
なぜか、adidasのジャージ上下。
「その格好で行くの?」
「エステだから?」

「たぶん本人は合理的だと思ってる」
「でも横浜駅だよ?」
「……森村さんだし」
二人、少しだけ沈黙。

そして朝ごはんを食べ終えた、
その時。
ピー。
「洗濯終わった!」
「時短コース、大成功!」
あとは干すだけ。

洗濯物を干して、
荷物を持って、
出発。

「モリリン、時計!」
「大丈夫!」
「9時30分?」
「いけそう!」

今朝は寝坊から始まった。
1時間以上、
予定より遅れて始まった朝。

なのに気がつけば、
ウォーキングをして、
朝の三部作を仕上げて、
お風呂に入り、
洗濯をして、
おにぎりを作り、
朝ごはんも食べて、
出かける準備まで完了。 

「森村さん」
「はい?」
「よく間に合わせました!」
「でも次は?」
「もう寄り道しないで出てくださーい!」

森村さん、
本日最初の oasis時間。

どうやら、
ほぼ予定通りに終了です。

それでは――洗濯物を干して、
横浜駅へ。

いってらっしゃーい!

— Morimura