今日書きたい一文字は、

銀。

白でもない。
灰色でもない。
光を受けると、
静かにきらめく色。

今朝の私の心には、
その「銀」がよく似合っていた。

始まりは、風さんだった。

昨夜、
姿のなかった風さんに、
ひとつの形を与えてあげようと思った。
そして朝、
現れた風さんを魅て驚いた。

白い風の精を想像していたのに、
そこにいたのは、
どこか銀色に輝く、
美しい存在だった。

その瞬間、
遠い記憶の扉が開いた。
シルバーフォックス。

若い頃、
どうしても欲しかった銀色の毛皮。
ふわふわと長い毛並み。
光の加減で、
白にも灰色にも、
そして時には青みを帯びた銀にも魅えた。

あの色を私は、
ずっと忘れていたのかもしれない。

けれど、
忘れたのではなかった。
心の奥で、
ただ静かに眠っていた。

それを今朝、
風さんの色が起こしてくれた。

銀という色は、
自分だけでは輝かない。

光を受けて、
初めてその表情を魅せる。
なんだか記憶も、
同じなのかもしれない。

ずっと昔の出来事も、
何かひとつの光が当たった瞬間、
突然、
鮮やかに蘇る。

ものはなくなっても、
その時の嬉しさ。
その人の言葉。
一緒に過ごした時間。
そんなものは、
ずっと心の奥に残っている。

今朝、
私の真っ白だった余白に、
最初に入った色。

それが銀だった。

冷たい銀ではない。
あなたの思いと、
二十歳の私と、
今の私をつなぐ、やさしい銀。

だから今日、
この一文字を残しておこう。

銀。

消えたのではない。
光を待って、
心の奥で眠っていただけ。

— Morimura