15時からご予約をいただいていたので、
今日は少し早めにお店へ出勤した。

このあとは待機する時間もほとんどなさそう。
今日はいつもの「居場所」を
セットしなくてもよさそうね。

そう思って、
そのまま少し早めにホテルへと向かった。
最近、
大通り公園の木々を眺めながら歩くのが好き。

テレビでは、
これから始まる紅葉の季節が特集されていた。

そうね。

これからは「山装う」季節。
木々は少しずつ、
緑の衣を脱ぎながら、
赤や朱や黄金をまとっていく。
そんなことを思っていると、
私もそろそろ、
秋の装いへモードチェンジかな。

ふふ。やっぱりファッションは、
春と秋が好き。
でも冬のコートも好きなのよね。

そんなことを考えながら、
ふと一本の木を見上げた。
大きい。
たくましい。
ずっとそこに立っているような
揺るぎない強さがあるのに、
なぜだろう。
どこか儚い。
大きなものに守られているというより、
もっと身近なところで、
そっと寄り添ってもらっているような
気がした。

木って、不思議ね。
ただそこに立っているだけなのに、
時々、
こちらが勝手に愛おしくなってしまう。
そんな木々の横を通り過ぎながら、
ホテルへ向かった。

そして、本日最初のドアが開きました。
迎えてくださったあなたは、
シュッとした佇まい。
どこか個性的で、
なんとなく芸術作家のような空気を
まとっていた。

「なんだか芸術家みたいですね」
そう言うと、
「よく言われるよ。でも普通だよ」なんて、
笑いながらおっしゃる。

普通。
ううん。
初めてお逢いした私には、
やっぱり少し「普通」ではないように魅えた。
いい意味で。

ソファに横並びに座ると、
「飲みたかったら飲んでいいよ。
遠慮しないで」
そう言ってくださったので、
では、お言葉に甘えて。
プレミアムモルツを一缶。
しかも飲んだのは、
私だけ。

ふふ。
ひと口、ふた口と飲んでいるうちに、
身体の内側から
カーッと温かくなってきた。
お酒のせいなのか。
それとも、
この不思議な初対面の空気のせいなのか。

あなたとは、
いろんな話をした。
そして、
あなたは私のことを
「ふしぎちゃん」と呼んだ。

「ふしぎちゃんって、
どんな人なんだろうと思って逢いに来た」
そう言ってくださった。
「あの日記を書いているのは、
どんな感じの人なんだろうって。
すごく興味があって、
逢ってみたくなったんだよ」

なんだか、
ちょっと照れる。
日々、
好き勝手に心のままを書いている
私の言葉の向こうに、
「どんな人なんだろう」と、
私そのものを想像してくださっていたらしい。

そして、
「14時からだと思っていたら、
いきなり15時になっていたから
びっくりしたよ」

あら。そこまで見ていてくださったのね。
「ごめんなさいね。
午前中の予定が少し押してしまって、
急遽15時に変えてもらったの」
そんなやり取りさえ、
初めてお逢いしたとは思えないほど
軽やかだった。

ぽん。
ぽん。
ぽん。
言葉を投げると、
すぐ返ってくる。
そしてまた、
こちらから返す。
妙にリズムがいい。
会話というより、
小気味よいラリーをしているみたい。

そのリズムを崩さないまま、
あなたと夢の世界へ。
お互いに好きなことを言い合って、
じゃれ合って、
少しからかって、
笑って。
近づいたかと思えば、
また少し離れて、
そしてまた、
ふっと近づく。
なんだか面白くて、
楽しくて、それでいて、
ちゃんと艶やかな大人の時間。

不思議ね。
初めてなのに、
妙に呼吸が合う。
なんだか、
あなたとはとても気が合いそう。

そして帰り際、
あなたがおっしゃった。

「次に来るときは、モリちゃん主導でいいから」あら。次もまた、
私が主導権を握るのね。
「ふふ」思わず笑うと、
あなたも笑う。

そんな最後まで軽やかな空気を残したまま、
ホテルを出た。
途中まで、
ふたりで並んで歩いた。

もうすぐ日の入り。
空は、
昼の色をゆっくり手放しながら、
赤銅色へと染まり始めていた。

私はその空を魅ながら思った。
今日のあなたとの時間も、
なんだかこの色に似ている。

真っ赤な炎ではない。
激しく燃え上がるものでもない。
けれど、内側に熱を抱えたまま、
静かに、
じわじわと色を深めていく赤銅。

もしかすると、
今日始まったあなたとの時間も、
これからそんなふうに、
ゆっくりと温度を増していくのかもしれない。

秋の木々が、
これから少しずつ色をまとっていくように。

今日の出逢いもまた、
これからどんな色へ変わっていくのだろう。
その続きを、
少し楽しみにしています。
また、待っていますね。

木々染まり
赤銅の空
暮れゆけば
ふたりの余韻
静かに燃ゆる

— Morimura