今日の物語は、
もう閉じたはずだった。
一日の振り返りも書き終えて、
あとはお部屋に戻って、
ゆっくり眠るだけ。
そんなつもりだったのに。
今、私は伊勢佐木モールを歩いている。
久しぶりの横浜の夜。
といっても、
たった3日ぶりなのだけれど。
不思議なものね。
この眠らない街。
キラキラと輝く街灯。
行き交う人々。
夜になっても衰えることのない街の息遣い。
ほんの数日離れていただけなのに、
ずいぶん長い間、
この景色を魅ていなかったような気がする。
ああ、帰ってきたんだな。
そんな懐かしさが、
胸の奥からじんわりと湧いてくる。
夜風が気持ちいい。
今日は朝から、
心地よい慌ただしさの中にいた。
横浜ステイの初日。
大切な方との時間も、
ゆっくり、楽しく過ごすことができた。
ちょっと鯖を食べすぎたのか、
胃のあたりはまだ少し重たい。
けれど、不思議なくらい、
心はすっきりと澄み渡っている。
そして、ふと。
いつもの場所で足を緩め、
私の小さな空を見上げた。
あっ……。
群青。
辺り一面、
どこまでも深く、美しい群青の世界。
朝、向こうの街で見上げた空も、
こんな群青色だった。
あの空と、この空。
遠く離れたふたつの街が、
ひとつの色で結ばれている。
まるで、群青鏡。
空という大きな鏡が、
私の心模様を映している。
そうか。
今の私の心は、
こんなにも澄んでいるんだ。
何か特別なものを
手に入れたわけではない。
ただ、逢いたい人に逢えて、
楽しい時間を過ごして、
無事に今日を終えられた。
それだけのこと。
けれど、その当たり前のような幸せが、
今夜はとても愛おしい。
ふわり。
夜風が頬を撫でていった。
ねえ、風さん。
この群青鏡、
私の心を綺麗に映してくれているかしら。
そんなことを思いながら、
もう一度、空を見上げた。
すると、不意に、
あの方の姿が心に浮かんできた。
そう。
群青の炎をまとった若様。
実は昨日、
新刊が出たので購入してしまったのだ。
ああ、困った。
お部屋に戻ったら、
メイクを落として、
ニベアタイム。
そのまま眠るつもりだったのに。
この群青の空を見てしまったら、
また若様の世界へ
迷い込みたくなってしまうではないか。
ふふっ。
さて、どうしよう。
眠りの扉を開けるか。
それとも、
若様の扉を開けるか。
そんな小さな迷いさえ、
今夜はなんだか楽しい。
横浜ステイ、最初の夜。
一度は閉じたはずの物語が、
群青の空の下で、
もう一度、静かに息を吹き返した。
今日という日は終わっても、
心の中の物語には、まだ続きがあるらしい。
【秋の一首】
ふたつ空
群青映す
夜の鏡
満ちたる心
風にほどけて
— Morimura
余話|群青鏡、ふたつの街を映して✨
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