午前4時。
ふと目が覚めた。

あれ?
昨夜は何時に眠ったのだろう。

そうそう、午前1時12分だった。
昨夜は、しばらく群青の世界を眺めていた。
深い青に包まれた幻想の世界。
その扉を開けた途端、
なぜか急に眠くなってしまい、
そのまま眠りに落ちていた。

それなのに、もう目が覚めた。
どうしてだろう。
まだ眠っていてもいい時間なのに、
なぜか今朝は外の空が気になった。

もしかしたら、
今朝も星が見えるのではないだろうか。
そんな予感がして、
そっとベランダに出てみた。

あっ!星が見える。
建物と建物の間に、
白く輝く小さな光。
ひとつ、ふたつ、みっつ。
こんなところからも
星が見えるんだ。

そう思いながら、
もう少し空を見上げてみた。

そして、身体をぐっと反らして、
さらに真上を見上げた瞬間。
わあっ!
そこには思いがけないほど、
たくさんの星たちが輝いていた。

なんて綺麗なんだろう。
群青の空に散りばめられた
小さな光の宝石たち。
ひとつ見つけると、
またひとつ。
その光を追いかけるように、
私の視線はどんどん空へと広がっていく。

ふと思いついて、
スマートフォンのコンパスを開いてみた。

あら。

私の部屋のベランダは、
どうやら南に向いているらしい。

今まで何度も立っていたベランダ。
けれど、方角なんて
気にしたこともなかった。
そんな小さな発見さえ、
今朝はなんだか嬉しい。

そして、
建物の切れ間に輝くひとつの星を
じっと魅つめていると、
ふと、懐かしい光が心によみがえった。
もしかして、この星は……。
向こうの街で、
毎朝いちばん初めに出逢っていた
あの星なのだろうか。

そう思った瞬間、
今度はあなたのことが心に浮かんだ。
早く逢いたい。
今、この同じ空の下で、
あなたも星を見上げているのかしら。
そんなことを考えている自分に、
思わず小さく微笑んでしまった。

でもね。
今朝は、昨日の朝よりも、
あなたとの距離がずいぶん縮まった。
そんな気がしている。
だからなのだろうか。
今朝の群青は、
いつもより少し艶やかに魅える。

黒が少しずつ薄まっていく、
ただそれだけの夜明け前の空。
見方を変えれば、
そうなのかもしれない。

けれど、私には違って魅えた。
どこまでも透き通るような、
それでいて深く、
どこか甘い色香をまとった群青。

昨夜までの胸のときめき。
そして、
今日またあなたと過ごすであろう
時間への待ち遠しさ。
そんな想いが、
私の心の中で
つやつやと輝いているからなのだろうか。
空までもが、
私の心を映しているように思えた。

不思議ね。
同じ空なのに、
心のありようひとつで、
こんなにも違った表情を魅せてくれる。

それにしても、
今朝の星たちは本当に美しい。
建物に切り取られた
この小さな空でさえ、
こんなにもたくさんの星が輝いている。

だったら……。
海まで行って、
もっと大きく広がる空を見上げたら、
どんな世界が待っているのだろう。

ああ、早く逢いに行きたい。
あの群青の世界に。
まばゆく白く輝く星たちに。

そう思うと、
もうじっとしていられなかった。
私はいつものウォーキングの支度を始めた。
白いHOKAに足を入れ、
靴紐をきゅっと結ぶ。

さあ、行こう。
まだ街は眠っている。
けれど、
私の心はもう群青の空へと
飛び出そうとしていた。

今朝は星たちが、
私を迎えに来てくれたのかもしれない。

そして、ふと思う。
あの星たちは、
これから私をどんな世界へ
連れていってくれるのだろう。

まだ、何も知らない。
ただ、何か素敵なことが
始まりそうな予感だけが、
胸の奥で静かに輝いていた。

私はそっと扉を開けた。
星に誘われて。
まだ見ぬ朝の物語へ。

— Morimura