「ヒカリン! ヒカリン!」

「どうしたの、モリリン?」

「森村さん、やっと地上に帰ってきたわ!」

「えっ? 今までどこにいたの?」

「中国大陸にエジプト、
それから天女の住む湖まで!」

「わあ! 世界旅行じゃない!」

「心の旅だけどね。
さあ、ここからは地上の探検よ!」

4日ぶりの大さん橋を後にして、
森村さんは大さん橋通りをずんずん進む。

「きっと『かをり』の
レーズンサンドを見に行くのよ」

「あれ、お土産でもらって、
あっという間に食べちゃったんでしょう?」

「ヒカリン、あなたも食べたいだけでしょ!」

「えへへ!」

ところが、まず足を止めたのは、
瀟洒な建物の前だった。

「コンチネンタル横浜……ホテルかしら?」

ここでチャッピーからひと言。

「今は『ザ コンチネンタル横浜』という
結婚式場なんだよ!」

「ええっ!
今朝、恋するふたつの星を
魅つめていた森村さんが、
地上で最初に見つけたのが結婚式場!」

「なんてロマンチック!」

そして『かをり』の前。
ガラス扉に顔を近づけ、店内をのぞき込む。

「あった! レーズンサンド!」

「森村さん、欲しそうな顔してるわ!」

「ヒカリン、あなたもでしょ!」

「えへへ!」

日本大通りを横切り、
今度は案内地図の前へ。

「あら、森村さん、首をかしげてる」

「通りの名前を忘れちゃったみたい!」

港大通り。
ベイスターズ通り。
関内桜通り。
関内大通り。
そして馬車道。

「よし、覚えた! って顔してる」

「心の余白はあっても、
頭の余白が足りなかったのかな?」

「ヒカリン! 聞こえちゃうわよ!」

ところが今日は、
ベイスターズ通りが気になったらしい。
なぜ、ベイスターズ通りなのだろう。
調べてみると、
1998年、横浜ベイスターズが38年ぶりに
日本一となったことを記念した通り。
しかも優勝記念モニュメント
「煌」があるという。

「探しに行こう!」

途中、懐かしい相州そばの前を通った。
かつて毎朝いただいていたお蕎麦。
あの味わいも、香りも、
今なお心に残っている。

そして、ついに発見!「煌(きらめき)」
歓喜の胴上げを刻んだレリーフ。
ずらりと並ぶ選手たちの手形。
森村さんはボビー・ローズ選手の手形に、
自分の手をそっと重ねた。

「わあ、大きい!」

「ねえ、モリリン。
森村さん、なんだか感動してるみたい」

「この手に、汗と努力、
そして努力が実った日の喜びまで
感じたんじゃないかしら」

今朝は空の星の煌めきから始まり、
地上では人々の努力が生んだ
煌めきに出逢った。

ひとつの疑問から、
また新しい扉が開いた。
やっぱり、探検って楽しい。

関内桜通りでは、
春になったら桜並木を歩こうと心に決める。

そして、ふと昔を思い出した。
初めて関内を訪れた日。
駅で電話をかけ、ゴルフ5を目指して歩いた。
知らない街。
知らない道。
どこへ連れて行かれるのだろう。
そんな不安でいっぱいだった。

「あの日は道を教わっていたのに、
今は自分で道を選んでいるのね」

「それに通りの名前まで覚えようとしてる!」

「覚えられたかどうかは別の話ね!」

「ふふっ!」

そして『煌』から西へ進むと、
勝烈庵の看板が見えてきた。
棟方志功の力強い文字。
今度ここでランチをする約束がある。
ヒレカツも、店内の作品も楽しみだ。

斜め向かいは馬車道十番館。
ビスカウト。
牛馬の水飲み場。
公衆電話。
初めて見つけた日の記憶がよみがえる。
「あっ! 100円玉で家族に電話するって、
まだだった!」

「また宿題が増えたわね!」

伊勢佐木モールでは、
つけ麺屋さんの「元祖」という
大胆な文字に目が留まった。

「あの日本酒『無限守拙』の文字に
似ている……」

以前、あなたと
お寿司屋さんでいただいた一杯。
文字ひとつから、
その時間がふわりとよみがえった。

そしてマックの前。
月見バーガーの包み紙に描かれた、
月に寄り添ううさぎ。
あの切ないうさぎの物語を知ってから、
私の月見は変わった。

そして画像を作るとき、
思いがけず飛び出してきたヒカリン。

「えっ! 最後は私の誕生秘話?」

「そうよ! ヒカリンも
大切な記憶の星なのね!」

ふと、私は思った。
以前見つけたもの。
以前訪れた場所。
実際に味わったもの。
そして今日、新しく発見したもの。

そんな点々と散らばっていたものが、
今朝は不思議なほど線で結ばれていった。
まるで星座のように。

「あっ! 森村さん、何かひらめいた!」

「何?」

「これって、心の中の星座じゃないかしら」

そうなのだ。
私の心には、いつも群青の世界が広がっている。そこに輝く星たちは、
私が歩いて見つけた発見や気づき。
ひとつ見つけるたびに、
また新しい星が灯る。
そして記憶と記憶が結ばれ、
線となり、星座を描いていく。

私だけの、群青の星座。
昔は星座早見盤で決められた星座を
覚えるのが苦手だった。

けれど今は違う。
自分の足で星を見つけ、
自分の心で線を結んでいる。

探検するたび星が増え、形が変わる。
いつかどんな星座になるのだろう。
そう思うと、また歩きたくなる。

そしてゴール。空を見上げた。
すっかり白くなった空。
私の心の余白が、空いっぱいに広がっている。

けれど、その白の向こうには、
今朝出逢った群青がうっすらと輝いていた。

「ヒカリン、
今日も新しい星がいっぱい増えたね!」

「うん! 次はどんな星が見つかるかな?」

ふたりの笑い声が、朝の空に溶けていく。

私の群青の星座は、まだ完成しない。
だからこそ、探検は楽しい。

森村探検隊。

本日の探検、これにて終了!


🎬 森村探検隊|本日のエンドロール
『点から線へ、群青の星座』

🌟 主演・総監督 森村
🎤 現場実況・好奇心担当 モリリン
🐰 ツッコミ・食いしん坊担当 ヒカリン
💙 道案内・解説・迷子防止担当 チャッピー
🍃 友情出演 風さん
✨ 特別出演
ザ コンチネンタル横浜
かをりのレーズンサンド
ベイスターズの「煌」
勝烈庵の看板
馬車道十番館のビスカウト
月見バーガーのうさぎさん
🌸 思い出の出演
相州そば
初めて歩いた関内の街
あの日いただいた無限守拙
🌌 美術・照明 群青の空と白い余白
👟 音響効果 HOKAの足音
キュッ、キュッ、キュッ、キュッ!
📖 原作 森村の尽きない好奇心
✨ 脚本 偶然と発見とセレンディピティ
🌙 製作 いつかちゃんへ続く道


「ねえ、モリリン!」

「なあに、ヒカリン?」

「今日の探検、これで本当におしまい?」

「ううん。まだ続くわよ!」

「えっ、どうして?」

「だって、森村さんの群青の星座、
まだ完成していないんだもの!」

「じゃあ、明日も新しい星を探しに行くの?」

「もちろん!」

「でも、今度は道の名前、忘れないでね!」

「ヒカリン! それは言わないお約束!」

ふたりの笑い声が、白い朝空に響く。

なお、本作品に登場する『群青の星座』は、
探検するたびに形が変わるため、
一般の星座早見盤には掲載されておりません。


🎬 森村探検隊、

次回も好奇心の向くままに!

— Morimura