いつものベンチにたどり着いた。

目の前には、
静かに朝を迎えようとしている海。
遠くで汽笛が鳴り、カモメが声を上げる。

水面は風に揺れ、
岸壁に小さな音を立てている。

今朝の空は、不思議な色をしていた。

漆黒と群青、そして白。
その三つの色が、互いの境界をほどきながら、
幾重にも重なっている。

まるで、
私の心のあわいを映しているようだった。

星を探して歩き始めた朝。
けれど、いつの間にか私の心は、
遠い過去へと旅をしていた。 

忘れていたはずの音色。
懐かしい人たちの面影。

そして、ひとつの星から生まれた、
心と心の不思議な響き。

点と点は、
思いがけないところでつながっていく。

それは、過ぎ去った時間だけではなく、
これから訪れる時間へも
続いているのかもしれない。

今朝、私はひとつだけ願いを預けてきた。
その願いもまた、
まだ見ぬ新しい物語への小さな一点。 

風さん。
今日も、いい朝になりそうね。
群青の鏡が、ゆっくりと白にほどけていく。
さあ、今朝の物語を始めよう。