長い一日が終わろうとしている。
不思議な一日だった。

人の温もりに包まれ、心が満たされる喜び。
そして、その温もりが
遠ざかったあとに訪れる静けさ。

同じ一日の中に、
こんなにも違う心模様がある。
誰かに想われていることを知る嬉しさ。
優しさに触れ、素直に甘えられる幸せ。
そんな温かな余韻を胸に抱きながら、
私は静かな時間へと身を委ねていた。

けれど、今夜の静けさは、少し違っていた。

一昨日。
私は、手のひらからこぼれ落ちる
一握の砂を見つめるような、
心許なさを感じていた。

何かを掴もうとしても、
指の隙間からこぼれ落ちてしまう。
そんな寂しさがあった。

でも、今夜は違う。

何もないと思っていた心の余白に、
小さな光が灯り始めた。
ひとつの想いが、
また次の想いを呼ぶ。
まだ形のない風景が浮かび、
そこから新しい世界が広がっていく。

ああ、なんて楽しいのだろう。
何かを成し遂げたわけではない。
何かを手に入れたわけでもない。
それなのに、
心はこんなにも満たされている。

ふと思った。

心の豊かさとは、
手の中に残ったものの多さではなく、
そこから生まれる想いの
深さなのかもしれない。

一昨日、こぼれ落ちていった砂。
今夜は、その一粒一粒が星となり、
私の心に降り注いでいる。

同じ空。同じ風。同じ静けさ。

それなのに、心のありようが変わるだけで、
世界はこんなにも違って魅える。
人恋しさも、寂しさも、ときめきも。

すべてが幾重にも重なり、
私という心の層をつくっている。
その奥には、静かに燃える小さな炎。
淡く、柔らかく。けれど、
決して消えることのない情熱。

それが、今夜の私の「淡」なのだろう。

そして今、心の中には、
まだ名前のない新しい世界が
広がり始めている。
その扉の向こうに何が待っているのか、
まだわからない。

でも、知らないからこそ、
胸がときめく。
未来は、まだ見ぬ世界を
想い描いているときから、
すでに始まっているのかもしれない。

今夜は、その小さなときめきを胸に、
一日を閉じよう。
心の余白には、
まだ幾つもの光が灯っている。
その光を、明日へとそっと預けて。

おやすみなさい。

今日という、私だけの一日。


長歌|淡き炎

逢ふ人の
ぬくもり胸に
灯を抱き
夜のしじまに
手をひらき
こぼるる砂は
星となり
あわいの空へ
夢結ぶ
明日へと続く
淡き火よ
心の奥に
消えず灯れよ

反歌

手のひらに
こぼれし星を
胸に抱き
まだ見ぬ朝へ
夢を灯せり

— Morimura