「みんな、早く早く!
森村さんについていきましょう!」

モリリンが元気よく声を上げた。

「わあ! 森村さん、歩くの速いね!」

ヒカリンがぴょんぴょん跳ねる。

そうなのだ。
目的ができると、俄然、足取りが速くなる私。
しかも今朝は、
真正面から明るい朝陽が
私たちを照らしていた。

「見て! 太陽がすごく綺麗!」

「私たちを応援してくれているみたい!」

風さんが、ふわりと微笑んだ。

「きっと、
次のビューポイントへ導いてくれているのね」

ところが!
象の鼻テラスに着いた途端、
隊長の足が止まった。

「あれ? 象の鼻って、どこ?」

「ええっ! 森村さん、
毎朝ここを歩いているんでしょう?」

「象の鼻パークは知ってるわよ。
でも、どこが象の鼻なのかは知らないの」

「ええーーっ!」

一同、ずっこける。
 実は私、
いつもなら大さん橋へ向かって
真っすぐ歩いていた。
その隣に広場があることは知っていたけれど、
柵の向こうに防波堤が延びていることには、
まったく気づいていなかった。

「隊長! あの湾曲した防波堤ですぞ!」

チャッピーが丸眼鏡をくいっと上げる。

「あっ! あれね!」

海へ向かって延び、
緩やかな曲線を描く防波堤。
確かに、象が長い鼻を
ぶらんと垂らしているように魅える。

「ぞうさん、ぞうさん♪」
モリリンが突然歌い始めた。

「わあ! 本当にお鼻が長い!」

ヒカリンも大喜び。

しかも、その鼻の上には
ガス灯柱が並んでいる。

「象さんのお鼻にも、
夜には明かりが灯るのね」

なんだか、それだけで楽しくなってきた。

名前は知っていたのに、
その由来となった場所を知らなかった。
何度もそばを歩いていたのに、
今日初めて足を踏み入れる世界。

知ることで、
いつもの横浜がまたひとつ
新しい顔を魅せてくれた。

さて、肝心の第二のビューポイント。

「チャッピー! プレートはどこ?」

「防波堤の先端付近を探してみましょう!」

みんなで足元をきょろきょろ。
ところが、なかなか見つからない。

「あら、三塔が一度に見える場所を
先に探した方が早いんじゃない?」

なるほど!
今度は空を見上げたり、足元を見つめたり。
天空を探すために地面を見つめ、
地面の印を探すために天空を見上げる。
なんとも忙しい探検隊である。

そのとき!

「あっ! あったよ! ここだよ!」

モリリンが走り出した。

「第二のビューポイント、発見!」

「やったあ!」

ヒカリンも大喜び!
さっそくプレートに立って、三塔を眺める。

「ああ……!」

目の前には、海を隔てた三塔の王国。
そして、真っ先に心を奪われたのは、
またしてもクイーンだった。

東から差し込む朝陽を一身に浴び、
緑のドームが美しく輝いている。
まるで女王様のティアラに、
無数の光が散りばめられたよう。
幾筋もの光にかしずかれ、
凛として、気高く、堂々とそびえ立つクイーン。

「わあ! 女王様、ここでも主役ね!」

モリリンがうっとりする。

「それに比べて、キングは?」

さっきより建物の上層階まで
見えるようになり、
少し迫力を増した気もする。
けれど、正面から見たときの圧倒的な威厳は、
まだ感じられない。

「王様、また女王様に花を持たせてる!」

「あははは!」

ところが、また問題が!

「ジャックはどこ?」

プレートの示す方角を見ても、姿がない。

「また隠れてるの?」

チャッピーが懸命に調べている間にも、
好奇心旺盛な隊長はじっとしていられない。

すたすた、すたすた。

「あれ? 森村さん、どこ行くの?」

「象さんのお鼻の先まで!」

「あっ! 何か覗き込んでる!」

そこでモリリンが、ひそひそ。

「ねえ、ヒカリン。
もしかして森村さん、
象さんが何か食べてると
思ってるんじゃない?」

「ええっ! お魚かな?」

「お鼻で海の水を飲んでるのかも!」

「あはははは!」

一同、大爆笑!
笑い声が、海から吹く風に乗って
広がっていった。

さて、ジャックは?
撮影した写真を
スマートフォンで拡大してみると……。

「あっ! いた!」

建物の陰から、
塔のほんの一部が顔をのぞかせている。

「ジャック!
そんなところに隠れていないで、
もっと堂々と出てきなさいよ!」

「まるで忍者だね!」

「ふむふむ。忍びのジャックですな!」

チャッピーが得意げに頷く。

キングには威厳。
クイーンには気品。
そしてジャックには、
どうやらかくれんぼの才能があるらしい。

ふふふ。

同じ三塔なのに、
眺める場所が変わるだけで、
その関係まで違って魅える。

一つずつ眺めれば、
それぞれが美しい歴史的建築。
けれど、三つを同時に眺めると、
そこに生命が宿り、
人間模様が生まれてくる。

立つ場所を変えることで、
魅えてくる世界も変わる。
そんな発見が、また胸に刻まれた。

「ねえ、次も見つかるかな?」

「もちろんよ!」

第一、第二のビューポイントを
見つけた探検隊は、すっかり自信満々。
見上げれば、
空は限りなく透明に近い、
私の大好きなブルー。

そこに浮かぶ白い雲は、
今朝拾い集めた発見や想いのようだった。

そして雲と雲の間には、
まだまだ新しい世界を迎える
心の余白が広がっている。

そんな私たちを、
太陽が温かな光で包んでくれていた。

「さあ、
次はキングの威厳を取り戻しに行くわよ!」

「ジャックも、今度こそ堂々と出てきてね!」

モリリンとヒカリンが声をそろえる。

「次は日本大通りですぞ!」

チャッピーが丸眼鏡をくいっと上げた。
風さんが、ふわりと背中を押す。
第二のビューポイント、発見成功!

いよいよ森村探検隊は、
三塔の王国の中心へ。

果たして、キングの逆襲なるか!

――後編へつづく。