白き雲が
群青の空に薄絹を渡す。

その小さな綻びから
星がひとつ、
またひとつ。

見えなくなっても
消えたわけではない。

ただ、白絹の向こうで
静かに輝き続けている。

三つの星を結べば
天空に小さな三角形。

少しいびつで
どこか不思議な
私だけの星のかたち。

写真には残せなかった。

けれど
私の瞳には
確かに映っていた。

だから
心の奥の静寂に
そっとしまっておこう。

いつか再び
この星に逢えたなら
今日の記憶も
新しい光を浴びて
さらに輝くのだろう。

風が吹く。

天空へと舞い上がりたがる心を
ふわりと包み
地上へと連れ戻してくれる。

足元には
文明開化の小さな絵巻。

石畳に刻まれた
遠い時代の人々の夢。

喜びも
戸惑いも
まだ見ぬ未来への憧れも。

そのひとつひとつが
時のあわいを越えて
私の心に語りかけてくる。

人は何を遺し
何を受け継ぎ
何を未来へ託すのだろう。

海の向こうに
三つの塔が見える。

王の威厳。
妃の気品。
そして、忍びの忠義。

それぞれの光が寄り添い
ひとつの王国を描いている。

やがて海に朝が訪れた。

雲間から伸びる
三筋の光。

三つの星。
三つの塔。
そして、三筋の光。

別々だった景色が
私の心の中で
ひとつの物語になってゆく。

波は幾重にも重なり
遠い時代の人々の鼓動を
今へと運んでくる。

その波の最後には
きっと
私の鼓動も重なっている。

ふと見上げれば
空は限りなく透明に近い青。

白い雲には
今日拾い集めた感動が浮かび

地平線には
まだ何も描かれていない
大きな余白が広がっていた。

ああ、なんて幸せなのだろう。

こんなにも
今という瞬間が愛おしいのに

もう
明日の朝が待ち遠しい。

今を生きる私と
明日を夢見る私。

その二人が
ひとつの心に同居している。

きっと
明日を待ち望むことは
今をおろそかにすることではない。

今日がこんなにも満たされているから
明日にもまた
新しい光を見つけたくなるのだ。

星はやがて
朝の空に溶けてゆく。

けれど
その光は消えない。

今日の私が受け取った輝きを
今度は明日の私へ。

そっと
手渡してゆこう。

そして、いつの日か。

幾つもの朝を重ねた先に
私だけの美しい星空が
広がっていることを信じて。


薄絹の
雲のほころび
星ひとつ
明日の私へ
光を渡す

— Morimura