群青の空に
ひとつの星が輝いた。

その光を追いかけると、
またひとつ、またひとつ。

知らなかった世界の扉が
静かに開いていく。

点は線となり、
線は面となり、
やがて、心の中に
ひとつの世界が生まれる。

そこには、
昨日の私がいて、
遠い日の私がいて、
まだ知らない明日の私もいる。

時の向こうで生きた人々の鼓動。

風に揺れる群青の花。

離れていても
互いを想い合う二つの星。

そのあわいには、
静かに燃え続けるピンクの炎。

そして、夜が明ける。

群青は白へと溶け込み、
何もないように魅えた余白に
ピンクゴールドの光が差し込んでいく。

ああ、なんて不思議。

あれほど胸がいっぱいだったのに、
まだ新しい光を迎える場所がある。

無一物中無尽蔵。

何も持たずに歩き出したはずなのに、
心には、いつしか
数えきれないほどの風景が息づいていた。

ふと、
遠い奈良の砂利を踏む音が聞こえる。

じゃり、じゃり。

振り向けば、
あの頃の私が
夢殿の前に立っている。

そして今の私に、
そっと微笑みかける。

「また、逢えたね」

ああ、そうだった。

過ぎ去った日々は、
消えてしまったのではない。

心の奥で、
次の出逢いを待っていたのだ。

月日は流れ、
人は旅を重ねる。

けれど、
本当に遠くまで旅をするのは
この心なのかもしれない。

七日の朝を歩き終え、
私はそっと振り返る。

さようなら、ではない。

また逢いましょう。

この街にも、
あの木にも、
あの星たちにも。

そして、
まだ出逢っていない私自身にも。

ねえ、風さん。

もう物語を閉じようと思ったのに、
私の心は、まだ開いたままなの。

風が吹く。

その向こうには、
まだ名前のない小径が続いている。

旅の終わりは、
次の物語が生まれる場所。

だから私は、
今日も心の扉を開いたまま、
光の方へ歩いていく。

行き交う心も、また旅人なり。


星ひとつ
道へと変わり
朝をゆく
心の旅路
果てなきままに

— Morimura