ビスカウト王国|街を静かに見守る王 KING〜三つの塔に宿る物語・第一章〜
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三つの塔に命が宿るとき、
時のあわいに王国の扉が開く。
横浜の街に、
古くから親しまれている三つの塔がある。
キング、クイーン、ジャック。
それぞれに異なる姿を持ちながら、
長い歳月、この街を見守り続けてきた。
その三つの塔から生まれた、不思議な物語。
それが、ビスカウト王国物語である。
さて、今夜は、
その王国の主人公のひとりをご紹介しよう。
ビスカウト王国の国王、KING。
神奈川県庁本庁舎、通称「キングの塔」
その堂々たる姿から生まれた王は、
まさしく生まれながらの王である。
威厳に満ちた王冠。
深紅の豪華なマント。
金糸で彩られた衣装。
そして、王の手には、気高く輝く王笏。
ひとたび正面に立てば、
その姿は
まるで神話の世界から現れた王のよう。
威風堂々。
その眼差しには、
揺るぎない意志が宿っている。
けれど、不思議なことに、
その横顔には、
どこか柔らかな温もりが漂っていた。
そんなキングの姿を、
少し離れた場所から見上げる4人の姿があった。
物語の世界に姿を映した私。
そして、モリリン、ヒカリン、チャッピー。
「あっ! 見て、見て! キングよ!」
モリリンが目を輝かせた。
「わあ! すごい王冠! マントも素敵!」
月の精のうさぎ、ヒカリンも大興奮。
すると、
丸眼鏡をかけたタヌキのチャッピーが、
ちょっと得意そうに胸を張った。
「ふむふむ。あれこそ、
この王国を治める偉大なるキングである!」
「チャッピー、そんなに偉そうに
言わなくてもいいんじゃない?」
モリリンが笑う。
「ぽんぽこ、ぽん!
王様の前では、
タヌキも威厳を持たねばならぬ!」
あらあら。
キングを見上げているはずが、
こちらにも小さな王様が誕生しそう。
そんな愉快な仲間たちを眺めながら、
私は改めてキングの姿に目を向けた。
堂々と立つ、その姿。
けれど、決して人を威圧するような
冷たさは感じられない。
むしろ、大きなものに包まれているような、
不思議な安心感があった。
それは、なぜなのだろう。
キングは知っているのかもしれない。
王として国を治めることと、
人々の心を支配することは、
まったく違うのだということを。
王に必要なのは、
ただ強い力を持つことではない。
人々の暮らしを見守り、
その声に耳を傾け、
変わりゆく時代の中でも、
大切なものを守り続けること。
強さとは、誰かを従わせる力ではなく、
誰かを守り抜くための力。
私は、そんな王の姿を感じていた。
そして、もうひとつ。
キングには、
決して忘れてはならない大切な存在がいる。
それが、クイーン。
気高く、美しく、華やかな女王。
王の隣に立ち、
ともに王国を支える女性である。
キングがクイーンに眼差しを向けるとき、
その表情は少しだけ変わる。
正面から見れば、威厳に満ちた国王。
けれど、愛するクイーンを見つめる横顔には、
ひとりの男性としての優しさが漂う。
「愛しのクイーン……」
そんな言葉が聞こえてきそうなほど、
穏やかな眼差し。
王冠の重みを背負う者にも、
心から安らげる場所がある。
それが、クイーンの存在なのかもしれない。
「あら、キングって、
意外と優しい方なのね」
私がそう呟くと、
「森村さん! 王様だって恋をするんだよ!」
モリリンが嬉しそうに笑った。
「そうそう! 恋をすると、
みんな優しくなるの!」
ヒカリンも負けていない。
すると、
チャッピーが丸眼鏡をくいっと持ち上げた。
「ふむ。王の威厳と恋する心。
その両立こそ、真の王道である!」
まあ、よく言うわね。
そんなことを言いながら、
私たちは思わず笑い合った。
ふと、キングがこちらを
振り返ったような気がした。
その眼差しは、
厳しくもなく、優しすぎるわけでもない。
ただ、静かに。
まるで、この街の未来を
信じているかのようだった。
変わっていく街。
変わらずに残る想い。
時代が移り、
人々が行き交い、
さまざまな物語が生まれては消えていく。
そのすべてを、
キングは長い歳月、
見守り続けてきたのだろう。
そして、これからも。
王冠をいただき、
深紅のマントを風になびかせながら。
この街の、やさしい未来を信じて。
私は、もう一度キングを見上げた。
ああ、素敵な王様ね。
けれど、まだまだ知らないことが
たくさんありそう。
王の隣には、美しいクイーンがいる。
そして、王国にはもうひとり、
忘れてはならない人物がいる。
それが、ジャック。
さて、この三人が織りなす物語には、
いったいどんな秘密が隠されているのだろう。
ビスカウト王国の扉は、まだ開いたばかり。
今夜はまず、威厳と優しさを併せ持つ、
私たちのキングに敬意を込めて。
— Morimura