「森村さん、お疲れさまでした!」

モリリンが、にっこり笑って駆け寄ってきた。「今日は4日ぶりの出勤だったんだよね!」

ヒカリンも嬉しそうに、
ぴょんぴょん跳ねている。

そこへ、丸眼鏡をくいっと持ち上げた
チャッピー。

「ぽんぽこ、ぽん!

本日の営業報告をいたします!」

「最初のドアでは、
ふたつの鼓動が響き合い、
最後のドアでは、
チョコレートが忽然と姿を消しました!」

「ちょっと、チャッピー!」
モリリンが吹き出した。

「それじゃ、食いしん坊のお話に
なっちゃうじゃない!」

ふふふっ。

思わず私まで笑ってしまった。

4日ぶりの出勤。

朝から予定をこなし、
慌ただしく移動して戻ってきた。

けれど、今夜は
ふたつの素敵なドアが待っていた。

最初のドアには、
再会を喜んでくださる温かな笑顔。
魅つめ合い、語り合い、抱きしめ合う。
ふたつの鼓動が重なり、
言葉が美しい旋律となって心に響いていく。
そんな夢のようなひととき。

そして、最後のドア。
そこには、いつもと変わらない
優しさが待っていた。
何気ないお喋りに耳を傾けてくださること。
美味しいものを一緒に楽しめること。
離れているときにも、
そっと心を寄せてくださること。

そんな小さな優しさの積み重ねが、
心を温かく満たしてくれる。

「森村さん、今夜はふたつのドアから、
素敵な物語が生まれたね!」

モリリンが微笑んだ。

「最初のドアには、
言葉の旋律とふたつの鼓動!」

「そして最後のドアには、
琥珀色の優しい灯り!」

ヒカリンが嬉しそうに両手を広げる。

そうなの。

それぞれに違った彩りを持つ、
かけがえのないひととき。

そして今宵は、
最後のドアから生まれた物語を、
ビスカウトクラブの世界に映してみた。

琥珀色の灯り。
ボルドー色のソファ。
静かに流れる音楽。
最後のドアの向こうには、
もうひとつの物語が広がっていた。

琥珀色の灯り。
ボルドー色のソファ。
静かに流れる音楽。
そして、黒と白の
バニースタイルに身を包んだ、
ちょっぴりおすまし顔のホールレディ。

ふふっ。

ところが、
お客様の優しさにすっかり甘えて、
いつものお喋り好きな森村に戻ってしまった。

「森村さん、そろそろ閉店のお時間ですよ!」

モリリンが声をかける。
チャッピーは着物の袖を整え、
丸眼鏡を直した。

「ぽんぽこ、ぽん!
今宵のビスカウトクラブも、
無事閉店でございます!」そのとき、風さんが優しい夜風を届けてくれた。

「今日もたくさんの幸せをいただきましたね」

そうね。

ひとつのドアには、
逢える喜び。もうひとつのドアには、
変わらぬ優しさ。
どちらも、かけがえのない心の贈り物。

人と人との出逢いは、
それぞれ違う色を持ちながら、
心の中で美しい彩りとなって重なっていく。
そんな幸せを感じた秋の夜でした。

最初のドアでお迎えくださったあなた。
最後のドアで温かく包んでくださったあなた。
今宵も本当にありがとうございました。

さあ、琥珀色の灯りをそっと落として。

森村、今宵ののれんを下ろします。

「お疲れさまでした!」
モリリン、ヒカリン、チャッピー、
そして風さん。
みんなの声が秋の夜に優しく響いた。

皆さま、どうぞ素敵な夢を。

おやすみなさい。

— Morimura