「あとひと仕事だけ」
そう思って寄り道をしたけれど、
実際には、その寄り道の往復のほうが、
ずっと大仕事だった。
指定されたコンビニの前まで、
やっとの思いでたどり着くと、
紙袋を提げ、パソコンを抱えて、
ちょこんと立っているおじさんがいた。
私と待ち合わせをしていた社長だった。
ひと言ぐらい嫌味を言ってやろうか
と思いながら向かったのに、
そのどこかかわいらしい姿を見た途端、
何も言えなくなってしまった。
きっと、自分で何度やってもうまくできず、
困り果てた末に、私を頼ってきたのだろう。
そう思うと、
ほんの二、三分で済むことなのだから、
にっこり笑って、
素直にやってあげようと思った。
そうしておけば、いつか私が困ったときに、
助けてもらえることもあるかもしれない。
同じやるのなら、
文句を言わず、
嫌味を言わず、
愚痴もこぼさず、
笑顔でやってあげたほうが、
相手だって嬉しいに決まっている。
結局、作業は五分ほどで終了。
「あとひと仕事」のはずだったけれど、
やはり寄り道の往復のほうが、
ずいぶん時間がかかってしまった。
家に帰り着いたのは、六時ごろだった。
疲れた。
本当に疲れた。
昨日はじけすぎたせいもあるだろうし、
三日遅れでやってきたSUPの筋肉痛もある。
よく眠ったはずなのに、
食べすぎ、飲みすぎで、
眠りの質が
あまりよくなかったのかもしれない。
とにかく眠たい。
さらに今日は、
じっくり考えなければならない
仕事ばかりだったので、
頭までずっしりと重たかった。
こんな日は、熱いお風呂に入って、
すっきりしたい。
お風呂から上がると、晩ごはんの支度をした。
支度といっても、
今日はデパ地下で
買ってきたものを並べるだけ。
それでも、家族から頼まれていた
好物を買ってきたので、
とても喜んでくれた。
そして、私が何より楽しみにしていたのは、
餃子。
普段は翌日に匂いが残るのが気になって、
なかなか食べることができない。
けれど、明日はお休み。
今日は心置きなく、
餃子を楽しむことができる。
デパ地下の餃子専門店で買ってきたのは、
海老餃子、しそ餃子、
そして普通の餃子の三種類。
それぞれの味の違いを楽しみながら、
久しぶりの餃子を、ゆっくりと味わった。
家族には煮魚を買ってきたけれど、
私は鮎の塩焼き。
やはり、夏の風物詩といえば、
鮎の塩焼きに限る。
そして、鮎とくれば、
もうひとつの夏の味覚は鱧。
昨日も鱧落としを思いきり食べたけれど、
今日は鱧と夏野菜の和風あんかけ。
こちらも、なかなかの美味だった。
餃子を味わい、旬を味わい、
家族と楽しく語り合う。
そんな何気ない食卓の時間を過ごしながら、
「ああ、自宅にいるって、いいな」と、
しみじみ感じていた。
今日は早めに寝よう。
そう思ったけれど、
朝のウォーキングができなかったので、
せめてストレッチぐらいは
しておくことにした。
横浜にいる間も、
朝から予定が入っていたりして、
ずっとストレッチをサボっていた。
だから、ずいぶん久しぶりのストレッチだ。
両腕を伸ばし、背中を伸ばし、脚を伸ばす。
体をぐいぐいと伸ばしていくと、
少し疲れるけれど、とても気持ちがいい。
重たかった頭の中まで、
少しずつすっきりしていくようだった。
本当は毎日続けたい。
けれど、
ウォーキングとストレッチの両方をするのは、
なかなか大変だ。
一番のネックは、やはり時間。
朝のウォーキングは、
途中で写メ日記を書く時間まで含めると、
三時間ほど外をうろうろしている。
そこに一時間近いストレッチを加えると、
朝の自分時間が、ほとんどなくなってしまう。
だから、ついついストレッチは後回しになり、
そのままサボってしまうのだ。
けれど、こうして家でゆっくり過ごせる日に、
のんびりストレッチをするのも悪くない。
明日はオフ。
朝のウォーキングには出かけるけれど、
帰ってきたら、
ついでにストレッチもしておこう。
たくさん動いて、たくさん考え、
たくさん食べた一日。
最後に体をゆっくり伸ばしたら、
ようやく今日という日が、
静かにほどけていくようだった。
それでは今から、私のご褒美時間。
ソファに身を預けて、
ショートドラマをしばし楽しもう。
笑って、味わって、体を伸ばして。
慌ただしかった一日の最後に、
自宅で過ごす静かな夜が、
いちばんやさしく私を包んでくれていた。
夜のひとり言〜寄り道の先のご褒美時間〜
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