心の中から、すべてが消えた。

けれど、不思議なほど満たされていた。

私の小さな千日回峰行を終えて、
心に残ったもの――
それは、「空」だったような気がする。

空っぽになった心は、驚くほど軽やかだった。

怒りや悲しみ、不安、嫉妬、罪悪感。
心にざらつきをもたらしていた
負の感情が消え、
私の内側は、静かになめらかに整っていった。

無意味な欲に振り回されることもなく、
他人の目を気にすることもなく、
ただ私らしく、前を向いて、
まっすぐに進んでいきたい。
そんな思いで、心が満たされていた。

そして私は、風を切るように颯爽と歩いた。
自然が奏でる幻想的な旋律に
心をくすぐられながら、
空になった場所へ、
今の私に本当に必要なものだけが、
少しずつ取り込まれていく。

昨日までの自分をそっと終わらせ、
今日からの新しい私へと、
生まれ変わっていくようだった。
人生という物語が更新され、
新しいページが、またひとつ増えていく。

けれど、それは単にページ数が
増えるだけではない。
人生はいくつもの章に分かれ、
その章ごとにプロローグがあり、
新たな展開があり、
クライマックスがあり、
やがて静かなエピローグを迎える。

その物語には、
時には鮮やかに、
時には静かに、
そして時には激しい筆致で、
私だけの色が重ねられていく。

これからも、
そんな私だけの物語を紡ぎ続けたい。

だから、今日も歩く。
前を向いて歩く。
今できることを、一生懸命にやる。
疲れたときには、少しだけ立ち止まる。
そして、その道の途中で出逢ったものを、
素直に受け入れ、感じ、
これからの歩みに活かしていく。

歩いて、感じて、立ち止まり、
また歩き始める。
昨日までの私を越えて、
まだ見たことのない景色へ。
空になった心に、
これから出逢う新しい色を
ひとつずつ重ねながら、
私はまた、自分の物語の続きを歩いていく。