ピンクゴールドに輝く朝の光に、
心を奪われた。

海から吹く爽やかな風に包まれ、
胸の奥にたまっていたものまで、
すっきりと洗い流されていくようだった。

朝陽にそっと背中を押されながら、
私の一日が動き始める。

向かった先は、中華街。
まだ静かな街をジグザグと歩きながら、
媽祖廟と関帝廟へ、5日ぶりのお参りをした。
媽祖様も関羽様も、
「おかえり」と
迎えてくださっているような気がする。

たった5日ぶりなのに、なんだか懐かしい。
いつも歩くのは、
お店がまだ閉まっている早朝ばかり。
いつか賑やかに店先が開いている時間にも、
ゆっくり歩いてみたい。
きっと私は、
大好きなエビチリと北京ダックが
美味しそうなお店を探しながら、
あちらこちらを覗いて歩くのだろう。

けれど、今、頭の中を占めているのは
朝そばだった。

家では二度、にしんそばを食べた。
私は温かいそばが好きだけれど、
二度目は時間がなくて、
冷やしにしんそばにした。
暑い日が続いていたせいか、
その冷たさが思いのほかおいしく感じられた。

だから今日の朝そばは、
いつもの温かい青ネギそばではなく、
冷たいそばにしよう。

店へ向かいながらメニューを調べる。
三種のとろろそば、たぬきそば、きつねそば、
めんまそば、そして茄子そば。
どれも冷やしでいただけるらしい。

今の気分は、茄子そばだろうか。
「ネギ多め」と言えるだろうか。
そんなことを考えているうちに、
頭の中は、もう朝そばのことで
いっぱいになっていた。

いつものように、開店前から店先に並ぶ。
開店数分前になると、
店員さんが注文を聞きに来てくれた。
「冷やし茄子、ネギ多めで」そう告げると、
店員さんは少し驚いたような顔をした。

無理もない。
これまで私は、
ずっと同じ温かい青ネギそばを
頼んでいたのだから。
歩いて火照った体に、
冷たいそばが心地よかった。

蒸し暑さで息苦しく、汗が流れ、
体温がぐんぐん上がっているのがわかる。
そんな体を、
冷たいつゆが内側から静かに冷ましてくれる。



そして何より、茄子がとてもおいしかった。
揚げびたしのような艶やかな茄子が、
そばの上にちょこんと鎮座し、
その隣には多めのネギ。
とてもシンプルなのに、茄子の深い艶と、
ネギときゅうりの瑞々しい緑、
大根おろしのピュアな白が、
目にも涼やかだった。

油をまとった茄子は、
冷たいそばと驚くほどよく合う。
そして、おろしと生姜が、
味わいをさらに引き立ててくれた。

今日は冷たいそばだったから、
あっという間に食べ終わってしまった。

久しぶりの朝そばに、心もお腹も満たされる。

「ああ、私は今、横浜にいるんだ」
そんな実感が、ゆっくりと胸に広がった。

ごちそうさまでした。
また明日も来ます。
明日は別の冷やしそばにしよう。
せっかくだから、
冷やしメニューを一通り食べてみよう。

そんな小さな楽しみを胸に抱きながら、
私は大岡川へ向かって、再び歩き始めた。