へケ・セラ・セラ、と唱えながら、
さっそく新しい今日のページを彩っていこう。
私は中華街へ向かい、
いつものように細い通りをジグザグと歩いた。
今日の中華街は、風がとても気持ちいい。
路地の奥から奥へ、
サーッと音を立てるように吹き抜けていく。
朝から風の波に包まれ、
新たな一歩を踏み出した私。
どうやら今日は、
風に縁のある一日になるらしい。
媽祖廟にお参りをして、
山下町公園を抜け、市場通りへ入る。
すぐ左手にあるのは、
お粥専門店の謝甜記二号店。
聞くところによれば、
一号店よりも二号店のほうがおいしいらしい。
それにしても、
どうして店先に
サンタクロースが立っているのだろう。
中華街とサンタクロース。
その理由は、いまだに謎のままである。
早朝の今は、
ほとんどのお店が固く扉を閉ざしている。
けれど、これらの店が一斉に開いたなら、
街はたちまち賑わい、
どこへ入ろうか迷ってしまうのだろう。
あのお店にしようか。
それとも、こちらにしようか。
いや、やっぱり向こうがいい。
そんなふうにウロウロしているだけで、
料理のおいしい香りに包まれ、
お腹がいっぱいになってしまいそうだ。
私も中華街では、
2回ほどランチをし、
ディナーにも一度訪れたことがある。
なかでも忘れられないのは、
萬珍樓の北京ダック。
あの香ばしさと味わいは、
今でも心に残っている。
またいつか、ぜひ食べてみたい。
私がジグザグと巡る通りの中では、
上海路がいちばん細く、
少し雑然としている。
私が歩く時間には、
まだ前夜のゴミがあちらこちらに残っている。
それをひょいひょいと避けながら進むのも、
なぜか楽しい。
もう少しすれば、ゴミ収集車がやってきて、
街の人たちが回収や掃除を始めるのだろう。
そして中華街は、
何事もなかったかのように
美しい姿へと整えられ、
昼の賑わいを迎える。
関帝廟にも、
いつものようにお参りをしてから、
中華街を後にした。
次に向かうのは、もちろん朝そば。
今日は少し早いペースで
歩いていると思っていたけれど、
時刻を確認すると、
それほどでもなかった。
いったい、どこで時間を使っていたのだろう。
けれど考えてみれば、
私は思いつくまま、目に入るまま、
心を惹かれるままに、
あちらこちらへ引き寄せられていた。
小さな寄り道を重ねながら、
街を眺め、風景を味わう。
それが、たまらなく楽しいのだ。
今日は、冷やしそばシリーズの第5弾。
注文するのは、冷やしたぬきそば。
もちろん、ネギは多めである。
お蕎麦屋さんへ向かう途中、
今日は横浜公園を通ることにした。
緑の木々が美しく、
早朝に聞く蝉の声は、どこか涼しげだった。
同じ鳴き声なのに、
昼間になると
急に暑苦しく聞こえてしまうのだから、
不思議なものだ。
それにしても、横浜という街には公園が多い。
そして、どの公園もきれいに整えられ、
居心地がいい。
私が知っているだけでも、
いくつあるのだろう。
なかでも、ベンチに腰かけて、
何も考えずにぼんやり過ごすなら、
この横浜公園がいちばん好きだ。
もっとも、そんな贅沢な時間は、
なかなか持てないのだけれど。
お蕎麦屋さんの前に着いて、
しばらく待っていると、
いつもの常連さんらしき人たちが、
ぽつり、ぽつりと集まってきた。
昨日に引き続き、
笑顔で「おはよう」と声をかけられる。
私も笑顔で、「おはよう」と応えた。
それだけのことなのに、
心がふっと温かくなった。
私たちは、名前も、
どこに住んでいるのかも知らない。
それでも、この朝、
このお蕎麦屋さんでつながっている。
そう思うと、今日のお蕎麦が、
いつもよりおいしく感じられそうだった。
店員さんが注文を聞きに来てくれた。
「冷やしたぬきそば、
ネギ多めでお願いします」
たぬきそばとは、
天かすの入ったお蕎麦のことらしい。
私の感覚では、天かすが入ったものは
「ハイカラそば」
そんな東と西の違いにも、
思わず頬が緩んでしまう。
違うからこそ、おもしろい。
それもまた、朝そば時間の楽しみである。
冷たいお蕎麦を、つるつると喉へ流し込む。
火照っていた体が内側から静かに冷まされ、
気持ちまでゆっくりと落ち着いていく。
ああ、お腹がいっぱい。
そして、胸もいっぱい。
心はまるで、
雲ひとつない空のように澄み渡っていた。
「ごちそうさま」そう言って店を出ると、
お腹を狸のようにぽんぽこと叩く。
最近、なぜかこれが癖になっている。
今日は、たぬきそばを食べたばかり。
そう思うと、またひとりで笑ってしまった。
それでは、いつものことながら、
少し重たくなったお腹と、
満たされた想いでいっぱいの胸を抱えながら、
朝の大岡川へ向かうことにしよう。
朝のひとり言〜風に誘われ、朝そばへ✨〜
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