予定どおりの新幹線に乗ることができた。

ギリギリではなかったけれど、
少しでも早く乗って
朝ごはんを食べたかったから、
ホームで朝の光を眺める余裕はなかった。
足早に車内へ入り、
自分の座席に腰を下ろす。
荷物を所定の場所へ収め、
シートをいっぱいまで倒した。
そして、そのまま静かに身を委ねた。

その瞬間、張りつめていた緊張の糸が
ふっとほどけた。
全身の力がゆっくりと抜けていく。
足置きへ足を乗せると、
その心地よさに思わず微笑んだ。

もう何度も繰り返している移動とはいえ、
乗り遅れてはいけないという気持ちは、
毎回変わらない。
無事に乗れるだろうか。
荷物は間に合うだろうか。
お店に鍵をきちんと返せるだろうか。
そんな小さな心配事を
いくつも抱えていたのだ。

それらがすべて「大丈夫」に変わった今、
ようやく心の底から安堵することができた。
お腹は空いていた。
本当なら、すぐに朝ごはんを食べたかった。
でも、この夢心地のような時間を、
もう少しだけ味わっていたかった。

コンビニで買ったコーヒーを一口飲む。
ボトルには「黒の余韻」という言葉が
添えられていた。
その文字を見た瞬間、私は思った。
今、私自身が余韻に浸っているのだ、と。

四日間の横浜ステイを無事に終えられたこと。
部屋をきれいに整え、
気持ちよく旅立てたこと。
予定どおりの新幹線に乗れたこと。
そんな一つひとつの小さな達成感が、
静かな余韻となって胸の中へ広がっていた。
しばらく、この心地よさを楽しんでいたい。
そう思った。

今日の朝ごはんは、
少し冒険をしてみることにした。
最近はコンビニへ行っても、
「これを食べたい」と思うものに
なかなか出逢えない。
迷いに迷った末、
手に取ったのは、
セブン‐イレブンの新商品
「アボカドサンド」だった。

七月二十二日に関東で先行発売され、
一週間遅れて関西でも
販売が始まったばかりの商品である。

私はアボカドが好きだ。
一番好きなのは、
食べ頃のアボカドを薄くスライスして、
そのまま味わうこと。
わさび醤油でお刺身のように食べたり、
味付け海苔で巻いたりするのも好きだ。
だから、スーパーへ行くと自然と手が伸びる。
軽く触れただけで、
食べ頃もだいたいわかる。
好きだからこそ身についた、
小さな感覚である。

その大好きなアボカドが
サンドイッチになっている。
一緒に挟まれているのは、ハムとトマト。
そこが少し気になった。
どうせ組み合わせるなら、
海老のような魚介の方が、
アボカドとは
もっと相性がいいのではないだろうか。

そんなことを思いながら、
ゆっくりとパッケージを開き、
期待と少しの好奇心を胸に、
サンドイッチを取り出した。