デパ地下で、
家族から頼まれていた
晩ご飯用のお惣菜を買い、
自宅へ帰ってきた。

午前中は荷物の片づけをしたあと、
ほとんど眠っていたせいか、
夕方近くになった今、
ようやく本当に我が家へ
帰り着いたような気がしていた。

「洗濯物は私が入れるからね」
そう家族に言ってデパ地下へ出かけたのだが、
「ただいま」と玄関を開けると、
家族は畳んだ洗濯物を片手に、
あちらこちらへ片づけているところだった。

「まあ、洗濯物を入れてくれたの?
ありがとう」そう言うと、
家族は、「だって、
いつも甘えてばかりではだめだから」
と答えた。

本当は疲れていたから
心のどこかでは、
私が帰るまでに
取り入れておいてくれたら助かるな、
と思っていた。

それでも、普段あまり家にいない私が
やらなければと思い、
「私がやるよ」と言ったつもりだった。
だからこそ、家族が見せてくれた
さりげない思いやりが、
胸にじんわりとしみた。

五日ぶりの自宅。
これでようやくゆっくりできると思った途端、
張り詰めていたものがほどけ、
体じゅうの力がだらりと抜けていった。
気持ちまで一つずつ緩み、
すべてが本来の場所へ戻っていくようだった。

洗濯物がすべて取り込まれ、
すっきりしたベランダの椅子に腰を下ろして、
外を眺めた。

五日ぶりの、この風景。
「ただいま。私、戻ってきたわ」
心の中でそうつぶやくと、
空も、太陽も、風も、緑も、
「おかえりなさい」と
優しく答えてくれているようだった。

やっぱり、我が家はいいな。
暑さでほてった体を包んでくれたのは、
安らぎのある温かさと、
どこまでも優しく、
いつまでも変わらないものの気配だった。

今すぐにお風呂へ入るのではなく、
まずはこのまま1時間ほど、
いつも観ているショートドラマを楽しもう。
何かを急ぐ必要もない。
誰かに合わせる必要もない。
ここからは、
ようやく私だけののんびりとした時間だ。

ベランダを通り抜けた風が、
髪をそっと揺らし、
熱を帯びた頬を優しく撫でていった。
その風の中には、
横浜の海辺や広い道路を一緒に歩き、
何度も私を包んでくれた風の名残が、
まだ混じっているような気がした。

横浜から私と一緒に帰ってきた風が、
今度は我が家の風と再会するように、
私のまわりで静かに溶け合っていく。
五日分の疲れをほどきながら、
懐かしいベランダの景色の中で、
私の心をもう一度、
ふわりと遊ばせてくれていた。

我が家へ帰ってきたのに、
心はまだ、
風とともに旅の続きをしている。
横浜の海の匂いも、
広い町を吹き抜けた風も、
今日のにぎやかな笑い声も、
すべてを胸に抱えたまま、
私の心はベランダの空へ
軽やかに舞い上がっていった。

そして、自由に遊んだ心が、
またゆっくりと私の胸へ戻ってくる。
ただいま。
やっぱり、ここが私の帰る場所。
そう思える幸せに優しく包まれながら、
五日ぶりの我が家の夕方は、
風とともに、
ゆっくりと穏やかな色へ変わっていった。