「風がおもてで呼んでいる。さあ、行こう」

そんな気分で、
アディダスのトレーニングウェアに袖を通し、
帽子をかぶり、外へ出た。

昼間の熱波が嘘だったかのように、
早朝は涼しく澄んだ風が流れている。

まだ夜が明けきらない静かな街は、
人の気配も少なく、
まるで限られた時間だけ現れる
特別な世界へ足を踏み入れたようだった。

気持ちは穏やかなのに、
どこか背筋がすっと伸びるような、
心地よい緊張感もある。
昼間の暑さからは想像もできないほど
爽やかな風が、そっと私を包み込む。

五日ぶりにこの道を歩ける嬉しさと
期待を胸いっぱいに抱きながら、
ゆっくりとウォーミングアップを始めた。

すると、一筋、また一筋と
風が集まり始める。
まるで「待っていたよ」と語りかけるように、
私が歩き出す瞬間を
静かに見守ってくれているようだった。

時刻は3:57。
4:00に起きるつもりだったのに、
今日はアラームが鳴る前に自然と目が覚めた。
きっと、「どうしても歩きたい」
という思いが、
眠りよりも強かったのだろう。

まだ目覚めきっていない体をいたわるように、
ゆっくりと身支度を整え、外へ出た。
それでも、
この場所まで来られたことが嬉しい。
これから歩けること。
これから風と戯れられること。
そして、これから朝の光に出逢えること。
その一つひとつが、
私には美しい儀式のように感じられた。

イヤホンから流れる「風が私を呼んでいる」
その旋律に寄り添うように、
私を待っていてくれた風とともに歩き始める。

涼しい。
なんて気持ちのいい風だろう。
現在の気温は27℃。
ほんの少し前なら27℃でも
暑いと感じていたはずなのに、
今では驚くほど涼しく感じる。
それが、温暖化という現実なのだろう。

今日の最高気温は34℃。
ふと横浜の天気を見ると、
最高気温は28℃だった。
「6℃も違うんだ……」
その数字の大きさに、
今、自分が横浜から離れた場所にいることを
改めて実感する。

少しだけ寂しさも胸をよぎる。
けれど、離れていても、
私の日記を通して
今日という一日を見守ってくださる
あなたがいる。
距離は離れていても、思いは届く。
そう思えた瞬間、
朝の静けさの中で胸の奥が
じんわりと熱くなった。

人は、一人で強がることはできても、
一人だけでは生きてはいけない。
仕事も、一人で突っ走るだけでは、
本当に良いものは生まれない。

昔、「人」という字は、
人と人とが支え合う姿を表していると
教わったことがある。
その意味が、今ならよくわかる。

家族の思いやりに支えられ、
仕事では仲間に力を貸してもらい、
そして遠く離れた場所から、
あなたが私を見守ってくださっている。
だから私は、
こうして朝の道を
まっすぐ前を向いて歩いていける。

今日も風は、私を呼んでいる。
その風に導かれながら、
一歩一歩、自分らしく歩いていこう。
感謝の気持ちを胸いっぱいに抱きながら。