風を感じるよりも先に、
いろいろなことを考えながら歩き出した。
今日も、これからの予定が
頭の中をぐるぐると巡っている。
急に飛び込んできた少し面倒な用事もある。
「今日でなくてもよかったのでは」
と思う予定もある。
その一方で、今日はどうしても
大切にしたい時間が待っている。
長い人生を歩み、
多くのことを教えてくださった
人生の大先輩とのひととき。
そして、家族と過ごす時間。
今日でなくてもいい用事は、
また明日でもいい。
あるいは、次に横浜から戻ってくる
お盆前でも間に合うかもしれない。
そう考えると、
少しでも心に余白を残しながら
過ごしたいと思った。
今日の風は、生ぬるくもなく、
まとわりつくこともない。
この時期とは思えないほど涼しく、
心地よかった。
きっと昨夜の雨が、
この爽やかな朝を運んできてくれたのだろう。
歩き始めて汗ばんだ肌を、
吹き抜ける風が扇風機のように
やさしく乾かしていく。
気持ちいい。
いつもなら、ここで自然と
「風が私を呼んでいる」と
口ずさんでいるはずだった。
でも今日は、風よりも先に、
昼から待っている
大切な時間のことを考えていた。
人生を積み重ねてこられた大先輩から、
これからの生き方を考える
示唆をいただける時間。
そして、その思いを込めた
贈り物まで用意してくださっている。
そのことが、
思っていた以上に嬉しかったのだ。
風に呼ばれて早起きし、
外へ出てきたはずなのに、
心はしばらく風の存在を忘れていた。
それほど今日は、
私にとって一つの節目となる日なのだと思った。
人生の節目なのか。
出逢いの節目なのか。
それとも、人として
さらに成長したいと願う節目なのか。
きっと、そのすべてなのだろう。
忙しい予定を頭の中で何度組み替えてみても、
いつかは向き合わなければ
ならないものばかりだ。
それなら、この町が
もう一日だけ私に残してくれた
今日という時間を大切にしよう。
できることは、できるだけ片付けてしまおう。
そう思えた瞬間、
私が歌に合わせて呼んだ風は、
「そのままでいい」と
背中を押してくれているようだった。
昼から迎える記念すべきひとときを思うと、
出逢ってから今日までの
およそ二十年という歳月が、
一つひとつ胸によみがえってきた。
今、いつもの場所から見下ろす街並み。
まだ眠りから覚めきらない家々の灯りが、
一つ、また一つと静かに輝いている。
その明かりの一つひとつが、
まるで私自身の歩んできた
人生の足跡のように思えた。
苦しいこともあった。
悲しいこともあった。
もう駄目だと立ち止まり、
投げ出したくなったこともあった。
それでも、そのたびに悩み、
考え、考え抜き、一歩ずつ乗り越えてきた。
だからこそ、今の私がある。
人生の大先輩は、
以前こんな言葉をかけてくださった。
「曲がる角は、きっと曲がりきれるはずです」
その言葉が、今も胸の奥で静かに響いている。
これからも私は、
いくつもの曲がり角に出逢うだろう。
迷う日もある。
立ち止まる日もある。
それでも、自分で考え、
自分で選び、
自分の足で歩くことだけはやめたくない。
風が、すっと吹いてきた。
流れる汗をやさしく冷やし、
私の頬をそっと撫でていく。
私も風の流れに乗り、
時の流れに乗りながら、
一歩ずつ、自分だけの道を歩いていこう。
朝の光は、まだ姿を見せていない。
木々の向こうにも、その気配はない。
けれど、それ以上に温かな光が、
今は私の胸の中で
静かに輝いているような気がした。
さあ、今日も新しい一歩を。
今日という新しい物語を、
美しく彩れるように。
一つひとつの出来事と真剣に向き合いながら、
心を込めて歩いていきたい。
胸に光る人生の贈り物へ✨
勃つねで応援-
-
共有で応援