人生の大先輩との、
かけがえのないひとときを終え、
私はデパ地下へ立ち寄った。

今日の晩ごはんの食材を選んでいると、
心が弾んでいたせいか、
「これも」「あれも」と、
つい買い物かごへ入れてしまう。
気づけば両手いっぱいの荷物になり、
その重みが肩へずっしりとのしかかっていた。

その重い荷物を提げながら、
てくてくと家路を歩く。
朝はあれほど涼しい風が吹き、
心地よかったというのに、
昼間の空気は一変していた。

照りつける陽射しは容赦なく、
思わず「暑い」と声が漏れそうになる。
ふと空を見上げる。
澄み切った空色のキャンバスに、
絵に描いたような白い雲が、
ぽっかり、ぽっかりと浮かんでいた。

「きれい……」
吸い込まれてしまいそうなほど
美しい夏空だった。
暑ささえ忘れそうになるほど、
その景色は心を穏やかにしてくれていた。

今日、ご一緒したお店では、
目の前のカウンターで
天ぷらを揚げてくださった。
「ピチピチ」「パチパチ」
油のはじける音が心地よく響き、
職人さんは慣れた手つきで、
一つひとつ丁寧に衣をまとわせ、
絶妙な頃合いで揚げていく。

揚げたての天ぷらがお皿に置かれるたび、
熱々を頬張り、
「はあ、はあ」と
息を吹きかけながらいただく。
それでも、そのおいしさには
思わず笑みがこぼれた。

外は驚くほど軽やかで香ばしく、
中には旬の食材のうまみがぎゅっと
閉じ込められている。
「やっぱりプロの技は違うな」
そんなことを思いながら、
一品一品を味わっていた。

旬の天ぷらをいただきながら、
生ビールで乾杯し、
仕事のこと、
人生のこと、
さまざまな人間模様のことまで、
話題は尽きることがなかった。

教えていただくことの方が圧倒的に多い。
それでも、
ときどき私も自分の考えをお伝えすると、
その一つひとつに耳を傾けてくださる。
その姿勢が、いつも本当にうれしい。

そして何より、
この日の始まりに、
感謝の気持ちを込めてお送りした文章を、
とても褒めてくださった。
「あの文章、本当に良かったよ」
その一言が、胸に深く残った。

自分の言葉が誰かの心に届いたことが、
何よりもうれしかった。
別れ際には、
「これからもよろしく。頑張ってください」
そう声をかけてくださり、
大きな贈り物まで手渡してくださった。

二十年以上のお付き合いになるけれど、
プレゼントをいただいたのは
初めてのことだった。
その贈り物以上に、
そのお気持ちがありがたくて、
胸が熱くなった。

今日は、たくさんの言葉をいただき、
たくさんの学びをいただき、
そして、大きな励ましまでいただいた。
私にとって、
忘れることのできない一日になった。

うれしい気持ちを
胸いっぱいに抱えながら
家へ帰ってきたのだが、
一つだけ誤算があった。
昼間に飲んだビールが
思いのほか効いてしまったのだ。

寝不足も重なって、
頭はぼんやりし、体も少し重たい。
「晩ごはんの支度、ちゃんとできるかな」
そんな不安が頭をよぎる。

それに、明日から横浜へ向かう準備は、
まだ何一つ手をつけていない。
少しだけ横になって眠りたい。
でも、旅支度はいつ始めようか……。

そんなことを考えながら時計を見る。
まだ明日の午前中にも時間はある。
焦らなくても大丈夫。
そう自分に言い聞かせると、
不思議と心に少しだけ余裕が戻ってきた。

今日いただいた贈り物は、
箱の中に入っている品物だけではなかった。
言葉も、時間も、励ましも、信頼も、
そのすべてが私への贈り物だったのだと思う。

その温かな思いを胸に抱きながら、
私は少しだけ体を休め、
これから続く今日の時間と、
明日、新しい風が待つ町へと旅立つ準備へ、
ゆっくりと気持ちをつないでいこうと思う。