日記を書き終えることなく
眠ってしまったこと。
47分寝坊してしまったこと。

そんな朝の重苦しい気持ちを抱えたまま
歩き始めた。
ちょうど歩き出した頃だった。

まずは昨日の最後の日記だけでも届けたい。
そんな思いでスマートフォンを見ながら、
慌ただしく文章を整えた。
ようやく投稿を終えたときには、
時計はもう5:00を回っていた。

でも、もう時間は気にならなかった。
一番大切なのは、
ちょうどいい時間に投稿することではない。
私が今日も、
この物語をあなたへ届けられたこと。
それだけで十分だった。

ほっとした瞬間、
昨夜の失敗も、
今朝の寝坊も、
横浜へ向かう日なのに
気持ちが晴れなかったことも、
一気に胸の奥からあふれ出してきた。
まるで反省文を書いているようだった。

ペンを走らせるように、
心の中にあるもやもやを一つずつ
文章へ映していく。
すべてを書き終えた頃には、
不思議と肩の荷が少し軽くなっていた。

日記を書きながら歩いていると、
いつの間にか見知らぬ道へ迷い込んでいた。
その先には、小さな小川が流れていた。
水のせせらぎに
耳を澄ませながら歩いていると、
胸の中に残っていた重たいものまで、
水とともに静かに流れていくような気がした。

風、光、水。
そんな大いなるものすべてに
抱かれているような気持ちになり、
涙をこらえながら、
私はまっすぐ前へと歩いた。

今日は音楽を聴くこともなく、
風を読む余裕もないまま、
パワースポットへとたどり着いた。

そして私は、思わず息をのんだ。
眩しい。

50分遅れて訪れた景色は、
いつもの朝とはまったく違っていた。
さんさんと降り注ぐ太陽の光が、
街全体を黄金色に包み込んでいる。

いつもなら、もっと早い時間に訪れるため、
太陽は雲に隠れていたり、
静かに柔らかな光を
放っていたりすることが多い。
今日は違った。

まるで太陽が、
すぐ目の前まで近づいてきたようだった。
海で魅る朝日よりも近く感じるほど、
その光は力強く、温かかった。

私はその光を全身で浴びた。
その瞬間、心が空っぽになった。
何も考えなくていい。
ただ光だけを感じていた。

すると、その静けさの中へ、
一陣の風がやってきた。
やんわりと。
本当にやんわりと。
優しく私の心を撫でながら、
少しずつ、少しずつ重さをほどいていく。

私の風だった。
その風に包まれながら、ふと思った。
私は寝坊もする。失敗もする。
横浜へ行きたくないと思う朝だってある。
それも全部、私なのだ。
だから無理に気持ちを切り替えなくてもいい。
どんよりした心も、
風に包まれ、
光を浴びながら、
少しずつ軽くなっていけば、それでいい。
そう思えた。

見渡せば、朝の街並みは
光を受けて美しく輝いていた。
静かだった街も、少しずつ目を覚まし、
一日を始めようとしている。
私も始めよう。

少し寝坊したことなど、もうどうでもいい。
私は前を向いて歩き始めればいい。
そして今日という一日の物語を
紡いでいけばいい。

風を感じ、
光を浴び、
空を見上げ、
鳥のさえずりに耳を澄ませる。
そんな自然体の感性で歩いていると、
無になった私の心へ、
すっと何かが入り込んできた。
やっぱり風だった。

もしかすると、
この風は横浜からやって来たのかもしれない。「ぐずぐず悩んでいないで、
早くこちらへおいで」
そう微笑みながら語りかけて
くれているようだった。

思わず『風が私を呼んでいる』を
聴きたくなった。

風が私を呼んでいる。
鳥が私を呼んでいる。
空が私を呼んでいる。
木々が私を呼んでいる。
晴れ渡る空が私を呼んでいる。

自然のすべてが、
横浜から私を
迎えに来てくれているような気がした。

やっと、『千鳥』が私のところへ帰ってきた。
風を引き連れて、
今日もまた新しい一歩を踏み出そう。

朝はどんよりと落ち込んでいた。
それでも私は信じている。
今日という一日の終わりには、
きっとまた、
私だけの美しい物語を
書き上げることができると。