今日は、いつも以上にお腹が重たい。
歩き続けているうちに、
足まで少しずつ重くなってきた。
ふらふらとした足取りで、
ようやく馬車道の
いつものベンチへたどり着く。
けれど、ベンチは雨に濡れていた。
それでも、座りたい。
首に巻いていたスポーツタオルを外し、
きれいに折りたたんで、
濡れた座面に敷いた。
その上に腰を下ろし、
くたりと背もたれにもたれる。
すると、背中に冷たい湿り気が、
じわりと染み込んできた。
それでも、もう動きたくなかった。
そのまま朝から二作目の日記をアップし、
ようやくひと息つく。
しばらく休んでから、
ゆっくりと立ち上がった。
お腹は、まだまだ重たい。
歩く足取りは、のろのろ、のろのろ。
けれど、今日は時間がある。
のろのろでもいい。
少しずつでも、前へ進めばいい。
そんな気持ちで、また歩き始めた。
やがて、大岡川が見えてきた。
いつもなら橋を渡り、
野毛本通りへ向かうところだけれど、
今日はなぜか、
川沿いをまっすぐ歩きたい気分だった。
五日ぶりに見る大岡川。
水面は風に揺らされ、
風の吹く方向へ、
小さな波をゆらゆらと立てながら流れていく。
水面に浮かんだ木の葉も、
その流れに身を任せるように、
ゆらり、ゆらりと揺れていた。
風が気持ちいい。
ときおり聞こえてくる電車の音も、
なぜかこの場所にとてもよく似合っている。
ぼんやりと川の流れを
魅つめている私の身体を、
風がそっと包み込む。
夢心地ではなく、
こういう気持ちを、
風心地と呼ぶのかもしれない。
水面をずっと魅つめていると、
私まで川の流れに乗り、
ゆらゆらと運ばれていくような気分になった。
私はまだ、この大岡川を
黄金町の駅より向こうまで歩いたことがない。
その先へ行くと、
もっと美しい景色が広がっていると
聞いたことがある。
今日、その先まで歩くのは無理だろう。
けれど、いつか必ず足を延ばしてみたい。
まだ私の知らない大岡川の表情が、
きっとその先で待っている。
風に背中を押されるように、
川の流れを魅つめながら、
一歩ずつ前へ進んでいく。
すると、水面の向こうに、
SUPを楽しむ人たちの姿が見えてきた。
そろそろ、私のゴールも近い。
耳元では、
軽快な「千鳥」の音楽が流れている。
風がおもてで呼んでいる。
呼んでいる。
私を呼んでいる。
さあ、行こう。
私のゴールを目指して。
風が私を呼んでいる。
鳥が私を呼んでいる。
雲が私を呼んでいる。
木々が私を呼んでいる。
そして今は、私も風を呼んでいる。
私が風を連れて歩いている。
まるで、風の女王になったように、
少し誇らしい気持ちで胸を張った。
軽快なリズムに合わせ、
風に乗り、
風に揺られ、
風に押され、
風にふわりと持ち上げられる。
そして最後は、ストンと、
私がたどり着くべき場所へ着地した。
クールダウンのストレッチを終え、
大きく深呼吸をする。
中華街の道順は少しワープしたけれど、
目標にしていた10キロを超えることができた。胸の中に、小さな達成感が芽生える。
そして、ふと空を見上げると、
厚い雲の向こうから、
太陽の光が
ほんのわずかに顔をのぞかせていた。
そこには、今日も風がいた。
ずっと私のそばを歩いてくれていた風が、
最後まで、私を見守ってくれていた。
風心地の川辺✨
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