お客様とお別れし、
少し間を置いて、
次にご予約をいただいていた
あなたの待つホテルへと向かった。
約束の時間まで、あと15分。
ホテルの前に着いた私は、
太陽の強い日差しを避けるように日陰に入り、
しばらくそこに佇みながら日記を書いていた。
日向には真夏の光が
容赦なく降り注いでいたけれど、
日陰に身を置くと、
ゆらゆらと吹いてくる風の中に、
かすかな涼の気配を感じる。
火照った肌を
そっと撫でていく風に包まれながら、
これから始まる時間へと、
心を静かに整えていた。そして――
次のドアが開きました。
にっこりと微笑みながら、
優しい声をかけてくださるあなたが、
そこにいらっしゃった。
初めてお逢いする方だったけれど、
長い時間をご予約いただいていたこともあり、
どんな方なのだろうと、
実は少しだけ気になっていた。
けれど、あなたの柔らかな笑顔を見た途端、
胸の中にあった緊張は、
張りつめていた糸がほどけるように、
一気に解き放たれていった。
「逢えるのを楽しみにしていました」
そう言ってくださるあなた。
そして、私の日記を、
ずっと読んでくださっていたのだという。
「僕の中では、
森村さんは不思議ちゃんだった。
だから、この不思議な人に
逢ってみたいと思っていた」
そんなふうにおっしゃってくださるから、
私はもう、
嬉しくて、嬉しくて仕方がなかった。
私にとって、「日記を読んでいるよ」と
言っていただけることは、
何よりも嬉しいことなのだ。
何気なく綴ってきた日々の出来事。
風のこと。
空のこと。
心が揺れた瞬間のこと。
その一つひとつを、
あなたがどこかで読んでくださっていた。
初めてお逢いしたはずなのに、
私が語る一言一言を、
まるで以前から
知ってくださっていたかのように
受け止めてくださる。
その眼差しや相槌の中に、
言葉ではうまく説明できない、
不思議な親近感を感じていた。
そして、私のためにいろいろと考えて、
お食事やビール、おつまみ、
さらにお土産まで用意してくださっていた。
さすが、私の日記を
ずっと読んでくださって
いるだけのことはある。
私が何を喜び、何を好み、
どんな時間に心をときめかせるのか――
あなたは、私が思っていた以上に
よく分かっていらっしゃる。
そんなことを、
私は心の中でそっと思っていたのよ。
あなたとの夢を見るようなランデブーは、
まるで、二人で一つの
恋の物語を語っているような時間だった。
楽しかった。
ドキドキした。
そして、心がときめいた。
初めは、二人の間を通り抜けていただけの風。
けれど、言葉を交わし、
笑い合い、
少しずつ心の距離を近づけていくうちに、
その風は、
いつの間にか二人を一緒に包み込む風へと
変わっていた。
そのことが、とても嬉しかった。
こんなにも心をときめかせてくれる
素敵な出逢いがあることに、
私は胸がいっぱいになり、感激してしまった。
さらに延長までしていただき、
あなたと一緒に、
急ぐことなく、
ゆっくりと時の流れを感じられたこと。
それはなぜか、
私の中で、新しい横浜物語の
始まりのように思えた。
もっとお話ししたい。
もっとあなたのことを知りたい。
もっと抱きしめ合いたい。
もっと近くで感じたい。もっと。
もっと――。
あなたと過ごすほどに、
私の胸の中には、
そんな思いが次々とあふれていた。
今日は、本当にありがとうございました。
初めてお逢いしたはずなのに、
ずっと前から、
日記の中で心を通わせていたようなあなた。
またお逢いできる日を、
楽しみにしています。
そしていつか、あなたへと続くドアが、
またすぐに、開きますように。
次のドアの向こうに✨
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