もうお仕事は終わりかなと思っていた、

その時だった。
終了まであと10分というところで、
ご予約が入った。

ホテルまで車で迎えに来ていただき、
そのまま次のホテルへ送っていただく。
なんて楽ちんなんだろう。
私が毎朝歩いている
港の近くのホテルを後にし、
向かった先は、
なんと、そこもいつも朝のウォーキングで
歩いている大岡川沿いのホテルだった。

一日の終わりが近づいているというのに、
朝の景色とまた巡り逢う。
「今日も少し帰りは遅くなるけれど、
明日の朝も頑張って歩きなさい」
そんなふうに、
風が背中を押してくれているような気がした。

そして、最後のドアが開いた。
扉の向こうには、
久しぶりに逢えるあなた。
可愛らしい笑顔で迎えてくださった。

「久しぶり。また逢えて嬉しいわ」
そう声を掛けると、
「僕も、お姉さんに逢いたかったから」と、
照れくさそうに微笑むあなた。

その変わらない笑顔に、
私まで自然と笑みがこぼれる。

穏やかな時間の中で、
お互いのぬくもりを感じながら、
久しぶりの再会をゆっくりと味わった。

甘えるように
いろいろお願いしてくるあなたが、
なんだか可愛らしくて、
お姉さんは思わず張り切ってしまう。
その無邪気な笑顔や、
心から安心したような表情を見ていると、
私まで幸せな気持ちになっていた。

そして、あなたの優しく穏やかな仕草に触れ、
私の心も自然とほどけていく。
久しぶりの再会は、
どこか時間を巻き戻したようで、
私まで少し若返ったような気持ちになれた。

ありがとう。
また逢える日を、楽しみにしています。

ホテルを後にし、
お店まで夜道をてくてく歩く。
夜風が、とても気持ちいい。

朝、私と一緒に歩いた風が、
また私のもとへ帰ってきてくれたようだった。

今日という一日の始まりを知っている風が、
今度は一日の終わりを
優しく包み込んでくれる。
帰りは少し遅くなったけれど、
不思議なくらい心は軽かった。

まるで私が風を連れて歩いているような気分。
いや、私自身が風と一緒に
歩いているのかもしれない。

ふわり。
また、ふわり。
夜の街で、風とともに静かに舞いながら。
さあ、お店まであと少し。
今日という物語を胸に抱きしめて、
私は足早に帰路を急いだ。