外は、いつのまにか暗闇に包まれていた。

むわっとするような生ぬるさも、
肌にまとわりつくような空気も、
もう今はない。
気持ちのよい夜風が、
すうっと吹き抜けていく。

そして、その風はどこからともなく
私のまわりへ集まってきて、
少し寝ぼけた頬をやさしく撫でてくれた。

あれから、何時間経ったのだろう。
ぼんやりした頭を夜風で冷やしながら、
記憶をたどってみる。

確か、お客様とお別れして
待機所へ戻ってきたのが、
16:50頃だったと思う。

眠たかった。
それでも眠い目をこすりながら、
今日が期限のサブスクの、
ご褒美ショートドラマを観ていた。
今日で最後だから、
観ている途中でプチッと
切れてしまうかもしれない。
それまでは。
せめて、それまでは…

そう思いながら観ていたけれど、
さすがのご褒美も、
睡魔には勝てなかったようだ。
いつのまにか、眠ってしまった。
時刻は17:30頃だったと思う。

そして、ふっと目が覚めた。
待機所で誰かを呼ぶ声が聞こえて、
それで目を覚ましたのではなかっただろうか。

目を開けた瞬間、
自分が今どこにいるのか、
一瞬わからなかった。

ここは、どこ?
ぼんやりとした意識の中で、
少しずつ記憶が戻ってくる。
ああ、そうだった。
私は寝てしまったんだ。
そして今、目が覚めた。
ここは、待機所。
そこまで理解するのに、
ずいぶん長い時間がかかったような気がした。

「ああ、2時間近く寝てしまったわ」
でも、あれだけ眠たかったのだから、
ちょうどいい睡眠貯金に
なったのかもしれない。
22:00からご予約をいただいている。
あともう少し眠ろうか。
それとも…
ショートドラマの続き、まだ観られるかしら。

そんなことを考えながら、
今、夜風に当たっている。

少し、お腹も空いた。
いつものパターンなら、
コンビニに寄って
何か買って帰るところだけれど、
今日はあまり食べたくない。
おにぎりを食べて、
すぐ眠ってしまったからだろうか。
なんとなく胃が重たい。

「どうしようかな……」

小さく呟いてみる。
もちろん、夜風は何も答えてくれない。
ただ、すうっと吹いて、
またひとつ、すうっと吹いて、
私の頬を撫でていく。

眠ろうか。
ドラマの続きを観ようか。
何か食べようか。
このまま、ただ風に吹かれていようか。

決められない小さな思いが、
私のまわりに集まってくる夜風に
そっとほどかれ、
行き先を決めないまま、
暗闇の中をふわり、ふわりと漂っていた。