夜の帳が明けるころ、
私の新しい朝は、もう始まっていた。
お部屋を片付けて、外に出る。
いつもの朝なら、今頃の私は港にいる。
海を魅つめながら、
昇ってくる太陽の光を
全身に浴びている頃だろう。
でも、今日は違う。
これから私は、向こうの町へと帰る。
5:00、お店にお部屋の鍵を返した。
その瞬間、なんだか急に気持ちが軽くなった。
肩に乗っていた何かが、
ふっとほどけたように、
心も身体も、ふわりと浮かんでいく。
ビルの入り口を出て、港の方を眺めた。
風が吹いてきた。
私の風が、吹いてきた。
ああ、迎えに来てくれたんだ。
私を向こうの町まで連れて帰ってくれる風が、
ちゃんと迎えに来てくれた。
そんなことを思うと、ますます心が弾んだ。
『千鳥』を聴きながら、駅へと歩く。
風に髪がたなびく。
お風呂上がりの、
まだ少し汗ばんでいた身体を、
朝の風が少しずつ涼やかにしてくれる。
一睡もしていないのに、
不思議なくらい気持ちがいい。
風って、こんなにも
気持ちのいいものだったのだろうか。
風が私を呼んでいる。
雲が私を呼んでいる。
鳥が私を呼んでいる。
木々が私を呼んでいる。
そして、まだ見えない海の向こうから、
太陽も私を呼んでいる。
海も私を呼んでいる。
そんな自然の声を全身で受け止めながら、
私は帰る道を歩いていた。
四日間の横浜ステイ。
初めての家系ラーメンを味わった。
あなたと、ゆっくり流れる時間を過ごした。
嬉しいことも、
心躍ることも、
たくさんあった。
本当に充実した四日間だった。
そして、またひとつ横浜が好きになった。
横浜へ来る楽しみが、またひとつ増えた。
だからなのだろう。
今日は、不思議なくらい寂しくない。
大通公園の緑の中を歩く。
朝の木々と一緒に呼吸をしているようだった。
葉の間をすり抜けてくる風を吸い込むたび、
身体の中まで
新しい朝に入れ替わっていくような気がする。
帰ることは、
何かが終わることではない。
またここへ戻ってくるまでの、
新しい時間が始まること。
そう思えば、足取りはますます軽くなる。
私は向こうの町へ帰る。
でも、私の風は一緒だ。
もしかしたら、
横浜の風まで、
こっそりついてきてくれるかもしれない。
そんなことを考えると、
帰るということさえ、
少しわくわくしてくる。
地下鉄の駅のホームへと向かう。
振り返らなくても大丈夫。
だって、また来るのだから。
またこの町を歩いて、
また海を魅つめて、
また風に髪を遊ばせる朝が来る。
だから今日は、
「さようなら」ではなく、
「またね、横浜」
朝の風にそう囁いて、
私は次の朝へ向かって歩いていく。
そして今日も、
風とともに、新しい一日を歩き始める。
またね、横浜✨
勃つねで応援-
-
共有で応援