予定通りの電車に乗れた。

今日は始発ではない。
始発の次の電車だ。
それでも、この電車が一番早く
向こうの町へ着く。
この二番目に出る電車は、
月曜日限定だとばかり思っていたけれど、
どうやら日曜日にも走っているらしい。

ひとつ、新しいことを知った朝。
無事に電車に乗れたところで、
今から電車朝ごはん。
昨日、お客さまと家系ラーメンを食べて、
日の出町の駅前でお別れした。
そのあと、駅前で見つけた
パン屋さんに立ち寄った。
そこで目に留まったのが、
ソフトフランスパンに
ハムとチーズを挟んだパン。

以前、よくコンビニで買っていた
パリジャンサンドに似ているけれど、
こちらの方が見るからに美味しそうだった。

サンドイッチのコーナーを眺めてみても、
私が食べられそうなのは、これだけ。
しかも、最後の一個だった。
やっぱり夕方に行くのはよくないのね。
ほとんど選択肢がなかったのだから、
ちょっぴり残念。
でも、最後の一個が、
ちゃんと私の好きな
ハム&チーズだったのだから、
これはむしろ、
運がよかったということなのかもしれない。

電車の中でパッケージをよく見てみる。
あら。パリジャンサンドではなく、
「ジャンボン・ゴーダ」と書いてあった。

ジャンボンとは、フランス語でハムのこと。
ジャンボン・サンドイッチは、
半分に切ったバゲットにバターを塗り、
ハムを挟んだだけの
とてもシンプルな
フランスのサンドイッチだそう。

私が食べたジャンボン・ゴーダには、
そこへさらにゴーダチーズが挟んである。
ひと口食べてみる。
うん、美味しい。
とてもシンプルなのに、すごく美味しい。
だからこそ、ハムとチーズそのものの
美味しさがよくわかる。
どちらにも、ちゃんとこだわりを感じた。

やっぱり私は、
サンドイッチなら
ハム&チーズの組み合わせが一番好き。
次に帰るときも、またコレかな?
いや、でも。昨日は夕方だったから、
ほとんど売り切れていた。
今度はもう少し早い時間に行って、
ほかのサンドイッチも魅てみたい。
またひとつ、
横浜から帰る日の小さな楽しみが増えた。

ジャンボン・ゴーダを食べ終えると、
今度は猛烈な眠気がやってきた。
少し寝ておきたい。
でも、今日の午後からの出張で
泊まるホテルの場所も、講演会の会場も、
まだちゃんと確認できていない。
眠ってしまう前に
調べておきたいのだけれど……。

もう、どうやら限界みたい。
さっきから何度も瞼が落ちてくる。
そりゃあ、そうだ。
昨日から一睡もしていないのだから。

お腹も満たされた。
電車は予定通り走っている。
私はちゃんと、帰る方向へ進んでいる。
だったら、もう少しくらい、
自分を電車に預けてもいいのかもしれない。

ホテルも講演会場も、
目が覚めてから調べよう。
窓の向こうでは、
朝の景色が静かに流れていく。
さっきまで歩いていた横浜は、
少しずつ遠くなっていく。

でも、不思議と寂しくない。
だって、また来るのだから。
またあの町を歩く。
また海を魅る。
また新しい出逢いがあって、
また新しい物語が生まれる。

そして、今朝、
私を駅まで送り届けてくれた風も、
きっとこの電車のどこかに、
こっそり乗り込んでいる。
もしかしたら横浜の風まで、
私についてきてしまったのかもしれない。

そう思うと、なんだか嬉しい。
だったら、ここからは風に任せよう。
私はほんの少しだけ目を閉じる。
電車の揺れに身体を預けて、
風に連れられるまま、帰る場所へ。
 
目が覚めたころには、
景色も私も、
もう少し向こうの町へ近づいているだろう。
さあ、ほんの少しだけ。
朝の睡眠貯金をしておこう。