20:00頃、懇親会がお開きになった。
けれど、私たち五人にとっては、
そこからがもうひとつの夜の始まりだった。

私以外は男性ばかり。
最高齢は82歳。
そして、いちばん若いのが私。
こうして並べてみると、
なかなか年季の入った五人組だ。
もう、かれこれ
二十年以上のお付き合いになる。

仕事の場や別の会合でも
顔を合わせる人もいれば、
この一年に一度の集まりでしか
逢えない人もいる。
性格も違えば、歩いてきた道も違う。
共通点があるようで、ないようで。
それなのに、一年ぶりに集まれば、
不思議なくらい自然に
昨日の続きのような時間が始まる。

たったひとつ、
無理やりにでも探せば共通点がある。
みんな、何らかの形で
熊本県につながっていること。
中には、「それ、本当に熊本と関係ある?」
と言いたくなるくらい、
かなり強引につながっている人もいる。

だから私たちは、自分たちのことを、
「チグハグな熊本県人会」と呼んでいる。
この五人でいると、
なぜだか結構目立つらしい。
仲間に入りたそうにしている人も何人かいる。

けれど、私はずっと、この中の紅一点。
年上の男性たちに囲まれていると、
それなりに得をしてきたことも、
きっとたくさんある。

今夜は、まず軽く一杯。
でも、それだけで終わるはずがないことを、
私はよく知っている。
その先に待っているのは、
きっとカラオケ。
みんな、決して歌が上手いとは言えない。
だけど――好きなのだ。
歌うことが。

そして、そんな人たちに
囲まれてきたおかげで、
私もいつの間にか、
ずいぶん昔のデュエットソングを
歌えるようになってしまった。

「銀座の恋の物語」
「居酒屋」
「二人の大阪」
「今夜は離さない」
「北空港」
たぶん今夜も、
このあたりをぐるぐる巡るのだろう。
今の時代に、
これだけ古い歌を普通に歌える私も、
なかなかのものだと思う。

私は少し早めにホテルの入口へ出て、
みんなを待っていた。
昼間の暑さを抱えていた街は、
もうすっかり夜の色に変わっていた。
暗闇の中で、ネオンがひとつ、
またひとつと輝き、
川の水面には赤や青の光が
ゆらゆらと揺れていた。
きれいだな。

そう思った瞬間――川の上を渡ってきた風が、
私のところへ集まってきた。
ひとつ。
またひとつ。

今夜の風は、ずいぶんごきげんだ。
水面を弾み、
光の間をすり抜け、
まるで音楽でも聴こえているかのように、
楽しそうに踊っている。
私の髪を揺らしながら、
「今夜は楽しくなりそうだね」と
囁いているようだった。

そうね。きっと今夜は、長い夜になる。
一年ぶりの仲間と笑って、
飲んで、そして懐かしい歌を歌う。
風はもう、私より先にごきげんになっている。
だから私も、
その風に誘われるように、
夜の街へ出ていこう。
チグハグな五人の、変わらない夜へ。