お風呂に入ろうと思って、
この部屋にはシャワールームしか
なかったことを思い出した。
そういえば、
最上階に大浴場と露天風呂があったはず。
朝ごはんは食べないから、
そのぶん時間はある。
せっかくだから行ってみよう。
最上階でエレベーターを降りると、
静かなスパがあった。
それほど大きくはないけれど、
余計なもののない、
すっきりとした空間だった。
その先には露天風呂。
露天風呂が好きな私は、
迷うことなく庭園へ出た。
そこには、
お釜のような小さな湯船が二つ並んでいた。
一人ずつ入るらしく、
ちょうど一つだけ空いている。
私はそこへ、どぼんと体を沈めた。
少し膝を折れば、すっぽりと収まる。
まるで私一人のために用意された、
小さな五右衛門風呂みたいだった。
温かなお湯に身を預け、庭園を魅つめる。
そして、空を見上げる。
昨日、いっぱい飲んだこと。
いっぱい食べたこと。
いっぱい笑って、
いっぱいはしゃいだこと。
いつ眠ったのかさえ覚えていない、
賑やかな夜。
そんな昨日を一枚ずつ脱いでいくように、
私は静かに湯の中へ沈んでいた。
酔いも、
疲れも、
昨日までまとっていたものも、
湯気の向こうへ、ゆっくりほどけていく。
なんだか、
海を脱いでいくような朝だった。
何もまとわず、
ただ、自分に還っていく。
そのとき、ふわりと風が頬を撫でた。
あ。やっぱり来た。
ホテルの外で待っていてくれる
と思っていた私の風は、
待ちきれなくなって、
私の気配を追いかけて
最上階まで駆け上がってきたみたいだ。
風さん、もう少し待っていてね。
昨日の酔いを覚まして、
食べすぎたお腹を休ませて、
ぼんやりした頭も澄ませていくから。
もう少しだけ、
何も考えずに空を魅ていたい。
そして、すっかり自分に戻ったら、
今度こそホテルの扉を開けよう。
きっとそのとき、
あなたは何事もなかったような顔をして、
私の髪を揺らすのだろう。
二日ぶりの私を、
迎えるように。
風待ちの朝湯✨
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